マスターたちのスイング診断 VOL.1スコッティ・シェフラー【解説/目澤秀憲】

シェフラー、マキロイ、ラーム、ケプカ…マスターたちによる祭典がいよいよ始まる。オーガスタを攻略してグリーンジャケットに袖を通すのは誰か。マスターズ優勝をサポートした経験を持つ目澤秀憲コーチが、優勝候補たちの最新スイングを分析・解説する。第1回目は、世界ランキング1位のスコッティ・シェフラー。

個性的に見えるけど実は“超合理的”なスイング

シェフラーのスイングは「個性的」といわれることが多いと思います。実際、足の蹴りが強くてフットワークは大きく、フィニッシュでバランスよく立っているところを見かけないほど。いわゆる正統派のスイングではないかもしれません。でも、スイングを分析すると、その動きはだいぶ合理的なんです。

赤枠・胸椎の位置、青枠骨盤の位置もほとんど動かない(撮影/田辺安啓(JJ))

注目してほしいのは胸椎と骨盤の位置。シェフラーのスイングを3Dデータで見ると、その2点がスイング中ほぼ変わらずに、胸と腰が回転できている。若干左寄りの軸ではあるものの、アドレスからフィニッシュまでその2点の位置は変わりません。胸椎と骨盤はそれぞれ上半身と下半身の回転運動の土台でもあり、それ自体が上下左右に動いてしまうと、当然安定感はなくなります。シェフラーのスイングは、外見のダイナミックさの割には、内部の動きはいい意味で小さく、体の強さも相まってバランスよく打てているわけです。

後方からスイングを見ると分かりますが、スイング軌道は少しアップライト。切り返しでループすることなく腕は一直線上を行き来しています。腕が長いのでスイングアークもデカいですし、身長もあるので軌道もシャローになりづらい。プレーンは高いところで振れるので、自ずと真っすぐの時間が長くなり、ドローもフェードも体の向きを変えるだけで打ち分けられます。また、上半身はずーっとボールの上にいるので、ボール位置を変えるだけで高低の球の打ち分けも自在。下半身からエネルギーをもらいつつ、自分の手もある程度使ってローテーションを入れながら飛ばしています。ジュニアの頃から教わっているコーチと共に、まさにシェフラーの体に合うスイングを作ってきた。その完成度は高く、安定感はやはり世界一です。

この動画の一打は、ピンに出球を出してから右の広いエリアに向けてフェードを打っています。いいフェードを打てていますよね。シェフラーは基本的にドライバーはフェードを打っていますが、スプーンでのドローも上手い。2年前にオーガスタで勝った時は、ドローが必要なホールでのスプーンでのティショットが光っていました。ことしもクラブを替えて、弾道の打ち分けを多用してくるんじゃないですかね。もちろんアイアンも上手く、そしてアプローチも振って飛ばさないカット系の打ち方が安定している。ショットからアプローチまで一貫している強さを感じます。

パターも3月にスパイダーツアーXにしたのは皆さんもご存じかと思います。スタッツも向上して、だいぶいい方向に進んでいますよね。特にオーガスタはパッティングの調子が成績を左右します。このタイミングでの道具の変更はとても大きく、まさに死角がなくなった感があります。シェフラーが優勝候補の筆頭であるのは間違いないでしょう。(取材・構成/服部謙二郎)

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