外出が面倒、窓掃除の作業員と目が合う…住民が感じる「タワマンならでは」のデメリット【マンショントレンド評論家が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

交通の利便性がいい、眺めがいい、共用施設が充実している……こうした理由から、魅力の多い「タワマン」に憧れを抱いている人は少なくありません。しかし、『60歳からのマンション学』(講談社)の著者でマンショントレンド評論家の日下部理絵氏は、「住んでみないとわからないデメリットも多い」といいます。今回は、そんなタワマンの「隠れデメリット」についてみていきましょう。

タワマンに「公園のような空間」がある理由

大きな掃き出し窓に日当たりの良い部屋、遮るもののない景色。

タワマンは、公開空地など全体の敷地が広くとられ、隣接する建物との間に距離があるため、高層階だけでなく低層階や、北向きでも日当たりや採光、通風が期待できる。また立地や向き、階数にもよるが、夜景などの眺望も魅力だ。

ただしタワマンの間取りは眺望の良さを活かすように作られているため、歪な形で住みにくいこともある。

タワマンの敷地内には、公園のような空間「公開空地」が設けられることが多い。通常、高層を建てる時は建物の容積率や高さ制限があり、そのままでは建てられないことが多い。しかし、敷地内の一部を誰もが自由に使える公開空地にすることを条件に、容積率や高さ制限を緩和してもらい、建築が認められるというわけだ。

景観が守られ、災害時には避難場所にも活用

公開空地は樹木などの緑豊かでベンチがあるような空間が多いが、なかには歩道、広場や水辺、アトリウムのような吹き抜け空間があるところも。災害時には避難場所や避難通路にもなる。

公開空地はあくまでもタワマン住民の私有地であり、管理もタワマン住民(管理組合)が行うのだが、公開空地があることで、抜け感が出て景観が守られたり、居住環境の向上、地域住民を含めた憩いの場になることもある。

また、これは高層階ならではのメリットだが、階数が上がるにつれ、害虫がいない環境となり窓を開けて過ごせる。さらに、飛んでくる鳥も少なく鳴き声や糞害、人に対しての危害や、ベランダで巣をつくるなどの被害にもあいにくい。

高層階からのいい眺めは“3日で飽きた”…タワマンの「デメリット」

魅力的なタワマンだが、もちろんいい点ばかりではない。

タワマンの醍醐味である眺望に関しては、早い人だと3日で飽きた、近くにもタワマンができ眺望が悪くなった、という意見は多い。むしろ全面ガラス張りだと、温室状態もそうだが、カーテンの既製サイズがあわず特注で高くなってしまったと嘆く声も。

さらに私自身も経験したことがあるが、ゴンドラできた窓掃除の作業員と目があい、何とも気まずかったことがある。せめても服をきちんと着ていて良かったと思ったものだ。

タワマンに多い「オール電化」も“瑕に玉”

またタワマンの多くにオール電化が採用されている。お風呂などで使う電気給湯器、キッチンにはIH調理器が採用されていることが多い。

電気給湯器を室内につける場合、スペースがもったいないし、音も気になることがある。IH調理器はフライパンなどの器具を選ぶほか、実際の火力は強いにもかかわらず直火ではないため弱いと感じたり、鍋底がIHにあたっていないと加熱が停止するため、フライパンなどを振ったり傾けたりといった動作ができなかったり、IH調理器特有の「ブーン」「ジー」という音に悩む人も多い。

しかも特定の人には「キーン」という高い音が聞こえたり、補聴器の装用に大きな雑音を発生させたりする場合もある。音以外にも取っ手にわずかな振動を感じたり、調理器具が動いたりすることもある。

IHは、電磁誘導加熱という電気の特性を活用して温めるのだが、これはIHに調理器具が共振して出る音である。鍋などの位置をずらしたり、置きなおしたり、火力を落とすことで、音が止まったり小さくなったりする。調理器具を変えるとおさまることもある。

もしガス器具を使いたい場合、マンション全体・全室がオール電化だと、ガスの導入は管理組合の合意形成が必要で極めて困難である(もっともガスと電気の併用・オール電化の選択ができるようなマンションであれば可能性はある。よく確認が必要だ)。

さらにオール電化は停電時に、使用制限がかかることも多い。エレベーターが停まれば共用部分が薄暗いなか階段で高層階までの昇り降り。エントランスのオートロックも解除され開きっぱなし、玄関ドアも電子キーのみの採用だと部屋の扉すら開かない。むしろ防犯設備が仇になり、便利が不便を招くといった事態になりかねない。

またタワマンだけではないが、近年のマンションは落下防止のため、手すりより低い位置にしか干せなかったり、洗濯物の外干しが禁止されていたり、タワマンではそもそもベランダ自体が設置されていないことも珍しくない。

「エレベーター待ち」がストレスになり外出が億劫になることも

エレベーターの待ち時間もストレスの元だ。最近では、低層階用、高層階用など階層ごとに停止階を決めたエレベーターを採用するなど工夫されてはいるが、やはりエレベーター待ちの時間は避けられない。また階層ごとにエレベーターを分けたことが、ヒエラルキーにつながりやっかみが起こることもある。

ゴミ置場が各階になければ、ゴミを持ってエレベーターで行き来することになりとても不便である。特にセキュリティのため、2階などの低層階でエレベーターを乗り換えるシステムだと不便極まりない。

こうしたこともあり、特に高層階の場合、外出するのが面倒になりがちである。食事も買い物も宅配が利用しやすくなっている昨今では、外に出る機会が減り、運動不足になる懸念もある。特にシニア層にとっては外で歩く機会が減ることは健康のためにも良くない。

電波が届きづらい、引っ越しが高額になりやすい…まだまだある“隠れデメリット”

またタワマンすべてではないが、携帯電話の基地局からの電波は、一般的に下方向に向かって出ているため、高層階には届きにくい傾向がある。これも意外と気付かないデメリットとしてあげられる。

さらにこれもあまり言われていないが、タワマンでは、引っ越し費用も高額になりやすい。防災センターに事前申請し許可をとっても、養生箇所の指定、使用できるエレベーターの制限、引っ越し日時の制約、引っ越し業者が指定され選べないなど、通常の引っ越しとは異なるルールがあることも多いのである。

日下部 理絵
マンショントレンド評論家
オフィス・日下部 代表

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