インバウンドが好調な韓国 50代現地女性がすすめる 日本人におすすめの穴場スポット

ソウルの繁華街・明洞の街並み【写真:写真AC】

日本は空前のインバウンド消費に沸いていますが、アウトバウンドはコロナ禍前までの回復に至っていません。とはいえ、日本人の海外旅行先として韓国は変わらず人気です。飛行機で短時間のうえ、時差がなく、K-POPや韓流ドラマ、ショッピングやグルメなど、さまざまな魅力が満載です。現地在住の50代韓国人女性に、韓国のインバウンド状況や、まだあまり知られていない穴場スポットを聞きました。

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訪韓日本人観光客数がトップに返り咲き 中国人観光客が急増中

韓国観光公社のデータによると、2023年の訪韓観光客数は約1103万人で前年比245%、コロナ禍前(2019年)の63%まで回復。また、同年の訪韓観光客のうち日本人は約231万6000人で、11年ぶりにトップに返り咲きました。一方、韓国からの訪日観光客数は約167万5500人で、国地域別で最多。つまり、日韓とも互いの訪問がトップということになります。

日本でも観光庁が2025年にはコロナ前の水準回復を目指す政策を展開しているように、韓国政府も2027年までに外国人観光客を3000万人とする目標を掲げています。どちらもインバウンドが順調な伸びを見せているなか、増えているのは中国からの観光客だそうです。

ソウルの南約35キロのスウォンに住む金志垠(キム・ジウン)さんは「目に見えて中国からの観光客が増えた印象です」と話します。その話を裏づけるように、訪韓外国人観光客1位の日本(232万人)に次ぎ、中国からは202万人が訪韓。こちらもコロナ禍からの回復傾向が顕著で、昨年8月に団体旅行が再開されたことも影響しているのかもしれません。

ソウルの南大門や明洞など、かつては流暢な日本語で話しかけてくる店主や店員が多かった記憶がありますが、今では中国語で声をかける場面にもよく遭遇するほどです。

若者に人気の聖水洞ではイチゴ大福を求めて行列も【写真:芳賀宏】

ソウルの「古美術街」は知る人ぞ知る人気スポット

3月20日、21日にはソウルの高尺スカイドームで、米メジャーリーグのドジャースvsパドレス戦が行われ、大谷翔平選手らの活躍がニュースになったばかり。夜もにぎやかな東大門に選手たちが繰り出す様子も報じられていましたが、韓国のインバウンド客の多くがやはりソウル中心地に集中するのは、仕方ないかもしれません。

若者に人気の明洞、買い物客でごった返す南大門のほか、韓流ドラマで有名になった梨泰院など――。地下鉄が発達した市内は、とてもリーズナブルに移動できるのも魅力でしょう。

そして、最近人気のスポットといえば、明洞から地下鉄で15分ほどにある「聖水洞」だそう。もともとは工場や靴製造会社が軒を並べていた街ですが、10年ほど前からハイブランドのショップやデザインシューズのお店、カフェや韓国で流行中のベーカリーやベーグルショップが立ち並ぶように。現在は、感度の高い若者や旅行者でにぎわっています。

また、ハイセンスな流行発信地もいいですが、50代女性の金さんがおすすめするのは、地下鉄5号線「踏十里」駅近くにある「古美術街」。一見すると問屋街のような雰囲気ですが、5つの建物に200軒ほどの店がぎっしりと集まっています。まだ日本のガイドブックなどにあまり掲載されておらず、日本人観光客は数える程度。今のところは“穴場”スポットかもしれません。

「明洞や聖水洞が若者でわいわいにぎわう街だとすれば、古美術街は大人がゆっくりと見て回っても楽しめるのではないでしょうか」と教えてくれました。

古美術街で見つけた韓国のスッカラ【写真:芳賀宏】

世界中からバイヤーがこぞって訪れる古美術街

古美術街は、韓国独特の小物類から、螺鈿(らでん)の細工が施された家具や古い薬棚、陶器類、地方ごとに文化の違う装飾品などが並びます。特徴を見比べながらのそぞろ歩きが楽しそうです。

たとえば、韓国料理でよく目にするスプーンのスッカラ。約100年前に作られたものは、真鍮を叩いて成形されており、味わいがあります。6000ウォン(約680円)は実用にもいいですが、ある店の女性店主は「額装してインテリアにしてもおもしろいよ」とアイデアを披露します。

古美術街は40年ほど前から営業されており、世界中のバイヤーが李王朝時代の家具や道具、陶器類などを買いに来るのだそう。日本では、ある女性タレントが訪れてYouTubeにアップしたことで知られるようになったとか。

女性誌などでも少しずつ取り上げられるようになり、小物類や家具を扱う香美堂の李龍淳(イ・ヨンスン)さんは「日本からのお客さんも来ます。家具は日本にお送りすることもできますよ」と案内してくれました。お店によっては片言の日本語を話す人がいますし、もちろんクレジットカード払いにも対応しています。フィーリングが合った大きな家具を買うというチャレンジもありかもしれません。

ソウル以外では釜山がおすすめ

ソウルのほかにも、穴場はあるのでしょうか。リゾートとして名高い済州島をはじめ、空港に近い仁川、韓国第三の都市である大邱などにも観光客の足が向いているようですが、なかでも金さんが推すのは釜山です。

「海が近くて日本の方が好きな海鮮料理もあるし、市場もあります。なにより、発展が一番目覚ましい街だと思います」

韓国の聯合ニュースによると、昨年上半期に釜山を訪れた人は56万5226人で、前年同期比で6.3倍。今後、さらに観光客が増えていく注目の都市になるかもしれません。

歴史的にも、貿易や文化などでの結びつきが強い日本と韓国。まだまだ知らない注目スポットや楽しみ方がたくさんあるようですね。

芳賀 宏(はが・ひろし)
千葉県出身。都内の大学卒業後、1991年に産経新聞社へ入社。産経新聞、サンケイスポーツ、夕刊フジなど社内の媒体を渡り歩き、オウム真理教事件や警視庁捜査一課などの事件取材をはじめ、プロ野球、サッカー、ラグビーなどスポーツ取材に長く従事。2019年、28年間務めた産経新聞社を早期退職。プロ野球を統括する日本野球機構(NPB)で広報を担当したのち、2021年5月から「地域おこし協力隊」として長野県立科町に移住した。

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