多くの卒業生が「県外流出」 佐世保の日本語学校 人材獲得へ「抜本的な策を」 長崎

森さん(左端)と進路の話をする留学生たち=佐世保市、長崎日本語学院

 この春、長崎県佐世保市内の日本語学校から161人の留学生が卒業した。そのうち同市内の大学や専門学校に進学したのはわずか11人。ほとんどの留学生が就職を見越して県外に旅立った。関係者は「人材が流出している」と警鐘を鳴らす。
 日本での就職を希望する留学生の多くが取得を目指す「技術・人文知識・国際業務」の就労ビザは、本国で大学を卒業しているか、日本で専門士以上の学歴をもっていることが取得要件の一つになる。そのため、同市にある日本語学校の多くの留学生は、4年大より年数が少なく、学費も抑えられる専門学校に進むという。
 佐世保には長崎日本語学院(南風崎町)と、こころ医療福祉専門学校佐世保校日本語科(白南風町)の2校の日本語学校がある。いずれもネパール人やベトナム人が多く、学生のほとんどが日本での就職を考えている。しかし希望する就職先は県内ではなく福岡や大阪、東京などの大都市。
 同学院の教員、森伊作さん(49)は「都会の方がチャンスが多いと思い込んでいる」と分析。行動範囲が学校、家、アルバイトと限られ観光などをする時間もなく「長崎の良さを知る機会がほとんどない。県や市はもっと獲得に向けてのPRを戦略的にしてほしい」と話す。
 また、留学生の多くは観光や車整備、ビジネスの専門学校への進学を希望するが、「知りうる限りこれらの専門学校は県内にはない」と同佐世保校日本語科の教員、山中このみさん(29)。進学の受け皿になる専門学校がないことも県外に流出する要因の一つだと指摘する。ある関係者は、観光地として知られる本県に観光の専門学校がないのは「おかしい」として、「日本人生徒の流出にもつながっているのでは」と話した。
 同佐世保校日本語科を卒業し、東京のビジネス系の専門学校に進学したベトナム出身のグエン・フュ・ルアンさん(21)は、ホテルやレストランでの就職を希望している。「専門学校は同胞の先輩に紹介してもらった。東京は時給も高い」と決めた理由を話す。

 介護分野では県社会福祉協議会などが人材確保を目的に、介護福祉士を養成する学校に進学する留学生を対象とした貸し付け(条件を満たすと返済免除)などを実施している。しかし、佐世保の日本語学校を卒業して県内の介護系の学校に進む留学生4人のうち、このような制度を利用するのは1人。そもそも「介護はきつい」と全体的に回避する傾向にあるという。
 同学院の森さんは「小手先ではなく抜本的な策を講じないと貴重な人材がどんどん流出してしまう。留学生をきちんと人材として扱い、存在を意識した町づくりを心がけてほしい」と訴えた。

「将来はホテルかレストランで働きたい」と話すグエンさん(右)=佐世保市、こころ医療福祉専門学校佐世保校

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