チョン・ソンリョンが黒いテーピングをつけている理由。リーグ3連敗の裏にあった川崎守護神の覚悟

リーグ戦まさかの3連敗を喫した川崎は、2週間の準備期間を挟み、FC東京戦(○3-0/ホーム)、横浜戦(△0-0)と徐々に復調の気配を漂わせている。

4-3-3から4-2-3-1への布陣変更で攻守のバランスを調整し、かさんでいた失点も抑えることができている。

そのなかで、後半に退場者を出した横浜戦も、ジェジエウ、高井幸大のCBコンビとともに、守備を引き締めたのがGKチョン・ソンリョンだ。

39歳の守護神は、雨が降りしきる横浜戦、バーなどに救われた部分もあったが、相手のシュートを的確にセーブ。安定感の高さを改めて示してみせた。

2016年に川崎に加入したチョン・ソンリョンはクラブと苦楽をともししてきたが、今季の3連敗は忸怩たる想いがあったようだ。その危機感を様々な行動へと変えたという。そのひとつが手首に巻くようになった黒いテーピングだ。

「前の試合(FC東京戦)もそうですが、個人的に死ぬ思いで、覚悟で、手首に黒いテーピングを巻き、強い気持ちで臨んでいます。毎試合そういう気持ちで準備しています」

黒とはどこか不吉なイメージが付くが、「危ない時、窮地に立たされた時に力が出る」との想いで、ここからチームと這い上がっていく決意が込められているのだという。

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さらにチームが勝てない流れを少しでも止めようと、自らの行動にも変化を加えてきた。

「4連敗、5連敗としないように、チームとして切り替えたかった。そのためにも自分は試合前日に食べるものを変えたりだとか、意識を変え、ひとつひとつ準備をしてきました。

また夜の試合だったら、(日中に)クラブハウスまで行ってランニングしたり、身体を動かしていましたが、家の近くでジムを借りて、そこでもっと身体を動かせるように準備の仕方も変えました。そういう気持ちで運をつなげていきたいと言いますか、運をチームに落としていきたいです」

準備。それはチョン・ソンリョンの姿を見て味方誰もが感化される部分である。

「準備は僕が好きな言葉。良い準備をグラウンドにつなげる。言葉よりも、グラウンドで見せつける。選手というものはそういうものだと思っています。

昔に韓国にいる時も、韓国の監督にも言われました。言葉よりもプレーで示せと」

かつて、鬼木監督は頼れる守護神をこう評していた。

「チャレンジし続けたら何歳でも伸びるんだなと。その姿をいろんな選手に見てもらいたい。変化を恐れない者こそ伸びる」

そして横浜戦の後には指揮官はベテラン陣の奮闘ぶりも語っていた。

「上の選手が最後、いろんな形で示していく。身体を張るところだったり、キーパーを含めて、球際のところと、あとはやられたくない気持ちが表われてくると思うんです。

(チョン・ソンリョンは)難しいボールをしっかり弾いたりだとか、前節でも1対1を止めたり、フィールドで言えば、アキ(家長昭博)が最後の最後まで身体を張って走ってキープして、前線につないでと、そういう姿勢は他の選手に伝わるものがあったはずですし、それに応えていくというのは非常にチームとして目指すべきところです。

(横浜戦は)自然と戦っていくということが、表われたゲームだと思います。これをシーズン通してやっていくことが大事ですし、次の町田戦(4月7日)は、よりそういうものが重要になるのかなと、連戦の最後ですしすべてを出し切るくらいにやってほしいです」

目に見えない部分に選手たちの知られざる準備や想いが隠れている。そうした想いは必ずチームにプラスをもたらすはずだ。

取材・文●本田健介(本誌編集部)

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