京都市の「シェアサイクル」に空白地域、一体なぜ? 自転車観光促進も現状厳しく

京都市役所前にあるシェアサイクルのポート。市中心部に偏在している(中京区)

 無人のポート(拠点)で自転車の貸し出しと返却ができる「シェアサイクル」で、京都市の周辺部で設置が伸び悩んでいる。市は自転車観光を促進し、普及に力を入れるが、山科区には1カ所しかないなど、「ビジネスとして成り立ちにくい」として、民間事業者が進出しにくいのが現状だ。市は地下鉄駅の空きスペースを貸し出すなどして偏在の解消を目指す。

 市は「公共交通の補完」としてシェアサイクルの普及を推進する。バスや鉄道が充実していない地域での活用や、災害時に公共交通が止まった時の移動手段としても期待している。

 市は民間事業者4社と協定を結びポート増設を促したところ、2020年7月末の189カ所から23年8月末には867カ所に増加した。利用者数も同4月の6224人から8月には8814人に増えている。30分の利用料金は大半が100~150円程度で、借りた場所と異なるポートで返却できる手軽さで人気を集めている。

 ただポートは市中心部に偏在している。山科区は2月に1カ所設置されたばかりで、伏見区醍醐地域や西京区も少ない。市内でシェアサイクルを運営するOpen Street(オープン・ストリート、東京都)は「(市バスの混雑などの)オーバーツーリズムの問題もあり、観光客の利用は多い。周辺部はビジネス的に観光地としての連携が広がりにくい」と説明。Luup(ループ、東京都)も「公共交通機関がオーバーツーリズムで圧迫されてしまっている。便利に利用してもらうため、まずは市中心部のポート密度を高めることに注力したい」と明かす。

 山科区には毘沙門堂などの人気観光地はあるものの、市中心部の観光スポットからは距離があることに加え、国道1号と三条通には勾配があり、自転車で快適に巡るのは少し厳しい。事業者は各ポートの自転車の残数に偏りが出ないよう、自転車を配分する作業も行っているものの、周辺部では回収や分配作業に費用や時間がかかる事情も壁になるという。

 市は、地下鉄駅や区役所の空きスペースを事業者に貸し出すことで、ポートの拡充を支援してきた。貸し出している市有地に山科区と西京区はまだないが、市自転車政策推進室は「山科など周辺部でも貸し出しできる市有地を探している。事業者に利用してもらいたい」という。

 2月に山科初となるポートを設置したオープン・ストリート社は「山科区と大津市を一帯の観光地として捉え、今後の設置を検討している」という。周辺部で観光客を含めた利用者が増えるかどうかが、今後の鍵を握りそうだ。

京都市が配布する自転車観光のパンフレット

© 株式会社京都新聞社