【色の名前クイズ】どっちが「秘色(ひそく)」?

日本には古くから伝わる色の名前があります。名前から想像できるものもあれば、予想外なものも。ここでは『増補改訂版 色の名前事典519』より、あまり聞きなれない色の名前を取り上げ、クイズにしました。今回は「秘色(ひそく)」。果たして、秘色はどちらでしょうか?

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秘色は【A】or【B】?

【A】
【B】

「秘密」を彷彿とさせる「秘色」。果たして、秘密と関係があるのでしょうか?

いずれが秘色なのか、次のページで、秘色と、もう一色についても色名の由来を詳しく解説しています。

秘色は【A】

唐の時代の中国越州窯で、鉄分を含んだ淡青色の釉薬(ゆうやく)を全体にかけた磁器が初めてつくられました。1000年以上も昔にこのような美しい磁器が出現したことからまず天子に献上され、臣下諸衆の使用が禁じられたため、この青磁は秘色と呼ばれました。

陸亀蒙(りくきもう)は「九天の風露が越窯を開けば千峰の緑を奪いとることができる」とこの磁器を賛美しています。平安時代の貴族たちが手に入れたのは、唐代から南宋にかけてつくられた青磁かもしれません。

「宇津保(うつぼ)物語」では「秘色の杯(つぎ)」が高官の邸宅で用いられているし、「源氏物語」の「末摘花(すえつむはな)」には「御台、秘色やうの唐土のものなれど」という記述があります。どうやら中国(もろこし)から渡来の秘色のようなもののようです。この色名は青磁の色とわかっていてもどことなく現実味が乏しく神秘的です。

それでは【B】は何色?

【B】は濡羽色(ぬればいろ)

寄席の講談や落語で美人の決まり文句になっている「髪は烏(からす)の濡羽色」というのは、艶のある美しい黒髪のことで、本来、黒の色名です。濡烏ともいいます。

もともと濡色という表現がありました。土も石も草木の緑も、雨に濡れると見る見るうちに色が濃くなり暗くなります。そんな色が濡色です。本来、黒い烏が雨に濡れればもっと黒くなるというわけです。濡烏は紫みのある光沢をもつ黒のことだといいます。

物の色の濃さ暗さは、その物体の表面状態と関係があります。表面が粗い粒子でできていると、光があらゆる方向に拡散反射されて白っぽい色に見えますが、光沢のある滑らかな表面では入射光はそのまま正反射して、そのほかの方向から見るとその反射光が目に入らないので、白い光で薄められない物体固有の反射光だけが見えます。漆黒が真っ黒なのも同じ効果。

※この記事は『増補改訂版 色の名前事典519』(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。


監修者
一般財団法人 日本色彩研究所

日本で唯一の色彩に関する総合研究機関。1927年画家・故和田三造氏により日本標準色協会として創立。1945年財団法人日本色彩研究所として改組。1954年、世界に先駆けて「修正マンセル色票」の色票化研究に着手し、諸外国の研究機関に寄贈するなど、長年にわたり先端的な研究を続ける。諸省庁、自治体からの要請への対処、JISの制定や関連色票の作成等への参画、ガイドラインの提案などに携わる。

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