ソフトバンク甲斐拓也から学んだ精神で初V 自主トレ仲間の阿部未悠「今週はそれを思い出した」【女子ゴルフ】

ツアー初Vを果たした阿部未悠【写真:Getty Images】

阿部未悠が初優勝

女子ゴルフの国内ツアー、富士フイルム・スタジオアリス女子オープン最終日が7日、埼玉・石坂GC(6535ヤード、パー72)で行われ、首位で出た阿部未悠(ミネベアミツミ)が大会新記録の通算15アンダーでツアー初優勝を果たした。8バーディー、1ボギーの65。同じく未勝利だった21歳の佐久間朱莉(大東建託)に1番からリードされたが、17番パー5で鮮やかに逆転した。会見では「推し」のソフトバンク選手とのエピソードなどを明かした。(取材・文=柳田 通斉)

最終18番パー4。阿部は佐久間より先に、1メートルのウイニングパットを決めた。外せばプレーオフ確実の状況。「さすがに痺れました」。だが、頭の中では「楽しむ、楽しむ」と繰り返していた。

「小4の終わりから始めて大好きになったゴルフですが、それを忘れていたことにオフに気付きました。一緒にトレーニングをしてくださった甲斐さんのおかげです」

北海道で生まれ育った阿部は「ずっと芝の上でゴルフをしたい」と思い、中学、高校を福岡で過ごした。そして、ソフトバンクと甲斐拓也のファンになっていた。その縁で交流が続く知人から「1度、体力強化でプロ野球選手の合宿に参加すればいい」と勧められ、すぐさま「推し」である甲斐を紹介してもらったという。オフには自主トレにも参加した。

「『私、推しとトレーニングしている。こんなことがあるんだ~』と思いました。その時に甲斐さんが『野 球を楽しんでいる』と話されていて、今週はそのことを思い出して、『私もゴルフを楽しもう』とずっと考えていました」

上田桃子、佐久間と3人並んで首位で出た1番パー5。バーディーを奪ったが、イーグルを決めた佐久間に1打リードされた。前半終了時には2打差。後半10番パー4でバーディーを奪ったものの、11番パー4では第2打を左の林に打ち込む大ピンチに陥った。

「3打目は出すしかできなくて、4打目のアプローチも7メートル残ってしまいました」

ここで集中力を高め、強めのタッチでカップインするナイスボギー。この一打で阿部は踏み止まった。

「あれは大きかったです。『エンジンをかけ直すぞ』と思えました」

男子ツアーに「メディア」として参加「撮られるのは気恥ずかしいですが…」

その後はショットをピンに絡め、12番パー5でバウンスバック。勝負どころの14番パー4からは4連続バーディーを決め、遂に佐久間を逆転した。

「でも、17番までは『まだ早い』と言い聞かせて、ガッツポーズはしないでおきました。とにかく楽しむことだけを考えていたので。18番では出ちゃいましたけど(笑)」

2000年度生まれのプラチナ世代。同期には国内で勝利を重ね、米ツアーを主戦場にする古江彩佳、西村優菜、吉田優利がいる。一方、自身は最初の19年プロテストに失敗。20年はコロナ禍で中止になったため、21年6月の最終プロテスト合格でようやくスタートラインに立った経緯がある。

「焦りはありましたが、あの3人はジュニア時代から凄かったので、優勝しても『そうだよな』と思って応援していました。でも、私も早く上位で戦えるようにはなりたいと思っていました。そういう意味では良かったです」

オフにはアプローチを磨きながら、趣味のカメラで「鳥撮影」を楽しんだ。さらに国内男子ツアーのゴルフ日本シリーズJTカップに「メディア」として参加。男子プロにレンズを向けた。

「今日も『やっぱり、桜をバックに撮るよな』と思ったりしていました。撮られるのは気恥ずかしいですが、初優勝が富士フイルムさんの大会だということも縁を感じます。副賞でいただいたカメラも使いたいです」

冷静にプレーを楽しんでいたコース上とは対照的に、会見では天真爛漫。今後は「未勝利だったのに根拠のない自信」で決めていた「シーズン複数回優勝」を目指していく。

THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida

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