けいれんを起こした保護猫は門脈シャント 「手術成功率50%」「投薬治療なら余命3年」 サードオピニオンで出会った獣医師が救世主に

保護当初のトト

千葉県我孫子市で猫の保護などを行う団体・ねこ友会。2020年11月に千葉県内のとあるエリアでTNR(地域猫を捕獲し、避妊去勢手術を実施した後、元いた地域で戻す活動)を実施しました。

その際、複数の地域猫が捕獲されましたが、その中に生後半年ほどの長毛のメス猫がいました。後につけられた名前は「トト」。長毛種のかわいらしい猫です。

当初は、捕獲した他の猫たちと同様に避妊手術を実施した後、トトも元いた地域に戻す予定でしたが、長毛種の猫は外での生活を続けているうちに毛玉などができ、それが溜まって皮膚炎を起こすケースがあります。ねこ友会ではトトは保護へと切り替え、世話し続けながら、ゆくゆくは「ずっとの家族」として迎え入れてくれる里親さんとのマッチングを目指すことにしました。

保護から2日後、ねこ友会と提携する預かりボランティアさんの家にトトを着れていったところ、急にけいれんを起こしてしまったのです。

恐ろしい病気「門脈シャント」

すぐに動物病院へと連れていきました。獣医師は「高アンモニア血症とみられ、門脈(もんみゃく)シャントの可能性がある」と診断。「すぐにでも入院させる必要がある」として、トトはそのまま1カ月半ほどの入院生活をおくることになりました。

保護後、すぐに入院生活をおくることになりました

門脈シャント(門脈体循環シャント)とは、本来であれば肝臓で解毒されてから体内を巡るはずの血液が「シャント」と呼ばれる異常な血管を経由することで、解毒されないままの体内を巡り、体全体に害を及ぼす恐ろしい病気です。

ねこ友会のスタッフは念のため、最初の動物病院を退院した後も、セカンドオピニオンとして別の動物病院へとトトを連れていきました。すると、ここでははっきりと「門脈シャント」という診断。手術を実施しても成功率は約50%。術後に後遺症が残ったり、最悪は死に至る可能性があるとも。手術をせずに投薬のみの治療ならば、「余命3年」という厳しい診断結果を言い渡されました。

多くの心ある支援によって治療費を捻出

リスク覚悟で手術するべきか、投薬で残された時間をたいせつにするべきか。難しい判断を迫られたねこ友会のスタッフでしたが、熟考を重ね、「手術は見送り投薬治療を行う。トトの猫生が短くなることになったとしても、できるだけ幸せなものにしたい」と決断しました。

先立つものはお金です。トトの毎月の通院代や検査代などの医療費を捻出するため、ねこ友会では「トトちゃん基金」を立ち上げ、治療のための支援金を募りました。心ある人たちからの支援が集まり、トトは投薬・療法食を続けることができました。

支援を募るために制作された「トトマグネット」

三度目の獣医師の診断は「リスク1%」

2021年9月末、ねこ友会のスタッフは「念には念を」としてサードオピニオンを求めることにしました。

優秀な獣医師を多数輩出する東京農工大学獣医学科の附属動物医療センターを受診。ここで救世主に出会うことになりました。

その獣医師はトトの診断結果をこう話しました。「トトの門脈シャントは少し変わった形をしていますが、問題なく手術できます。手術のリスク1%です」と。さらには「劇的に良くなる可能性もある」と言い、「術後3カ月ほど経過すれば普通の食事も食べられるようになるだろう」とも。この診断結果を聞き、ずっとトトのお世話をし続けてきたスタッフは涙が止まりませんでした。この獣医師の言葉を信じ、手術に踏み切ることにしました。

ずっと支援してきた人がトトを迎え入れてくれた

2021年10月、トトは異常な血管シャントを閉じる手術に挑みました。

手術は1時間ほどで無事終了。副反応が出やすい3日間の入院を経て、比較的早い段階で退院することができました。3カ月後に獣医師に診てもらうと「数値正常。全て問題なし」との診断。ついにトトは保護から1年の闘病生活を経て、普通の生活が送れるようになったのです。

2022年1月、トトの経過をずっと見守り応援してくれていた人が「家族」としてトトを迎え入れてくれることになりました。

新しいおうちで先住猫と仲良く遊ぶトト

新しい家は先住猫2匹と犬1匹がおり、これまでのトトの闘病生活とはまるで違う環境でした。当初こそ「本当にここにいて良いの?」と、トトはぎこちない様子を見せていましたが、里親さん家族のたっぷりの愛情を受け、今では健康で楽しい毎日をおくれるようになりました。

「これだけの過酷な経験をした分、これからのトトの猫生はさらに楽しく幸せに溢れた毎日であってほしい」とスタッフは願いました。

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(まいどなニュース特約・松田 義人)

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