スカート澤部とシマダボーイが語る「シマダ選手権の楽しみ方」

パーカッショニストのシマダボーイによるライブイベント『シマダ選手権大会』が、今年も4月10日(水)に渋谷WWWで開催される。『シマダ選手権大会』とは、シマダボーイが所属するバンドとサポートを務めるバンドで構成されるイベントで、今年は鶴岡龍、トリプルファイヤー、僕とジョルジュ(スカート・姫乃たま) × シマダボーイズ、Fullfaceの4組が出演する。

このイベントに先行してニュースクランチがスペシャル鼎談を実施! シマダボーイ、スカートの澤部渡、ライブのサポートメンバーである佐藤優介(カメラ=万年筆、僕とジョルジュ)、岩崎なおみ(The Uranus、Controversial Spark)、佐久間裕太(ex.昆虫キッズ)の面々に、シマダ選手権の見どころについて聞いた。

▲スカートの澤部渡

『僕とジョルジュ3』2年越しのレコ発

――『WHITE UTOPIA 〜第31回シマダ選手権大会〜』が今年も開催されます。

シマダ:2年連続で開催するのは今回が初めてなんですよ。昨年はWWWのブッキングの人に「シマダ選手権、やらないんですか?」って聞かれて、前に開催したのがコロナ禍前だったんで、“久々にやってみようかな”って。それで昨年やってみて、みんなすごく楽しそうにしてくれたんです。今回で5回目か6回目だと思うんですけど、たぶんスカートは皆勤賞だと思うんですよね。最初から甘えてます。

――スカートは、姫乃たまさんがボーカルを務めるユニット、僕とジョルジュのバックバンドとして出演されます。この経緯は?

佐久間:僕とジョルジュが『僕とジョルジュ3』というアルバムを2022年に出したんですが、いろいろあって一度もライブができなかったんですよ。印税が微々たるものなんですけど……。

澤部:本当にね。

佐久間:ディスクユニオンからの印税って、一定額を超えないと振り込まれないんで……振り込まれるのが先か、俺らが死ぬのか先かって感じなんですけど。

――笑。

佐久間:まあ、とにかく、今回ライブができる良い機会だなって、ボーイの鶴の一声ですね。

シマダ:いやいや。でも、たしかに良い機会ではありましたね。2年越しのレコ発になります。

――『僕とジョルジュ3』はすごく前衛的なアルバムですよね。

佐久間:そうですねえ、しっかりもしてるし、前衛的だし。

佐藤:制作期間も1日だったんですよ、1日で12曲を録音しました。

――当時のインタビューを読んだら、ビートルズの『ゲット・バック』みたいな制作環境だったって。

佐藤:そうなんです、あれが自分たちにとっての『ゲット・バック』なんです。

佐久間:まあ、ビートルズは戻る所があるから“ゲット・バック”なのであって、僕とジョルジュは戻る所はないですけどね(笑)。

――(笑)。『僕とジョルジュ3』は短いから、全曲やろうと思ったらやれますよね。

佐藤:やれるところまでやりたいですね。

佐久間:あとは聴衆が耐えられるかどうか……。

澤部:でも、今日みんなでスタジオ入ってよかったね。

佐久間:姫乃さんは今日はいないんですけど、一度合わせておいてよかったなって。姫乃さんは当日合わせられると思うんで。

シマダ:『僕とジョルジュ3』のレコーディングのとき、殺伐とした雰囲気のなかでディスクユニオンの金野さんが買ってきたフライドポテトが、誰も食べずにどんどん冷えていったのを思い出します。

佐久間:揚げ物とか脂っこいものを買ってくるんですよ。そんなのレコーディングのときに誰も食べないのに。

澤部:ただ、今回のライブは、「僕とジョルジュ3」のオリジナルメンバーじゃないんですよね。

佐久間:そうそう、山ちゃん(ex.どついたるねん)がいないんですよ。

シマダ:山ちゃんはお子さんもいるし。

佐久間:そうそう、お子さんがいる人がやるような音楽じゃないから……。

(一同笑)

佐久間:人の親がやるような音楽じゃない。

澤部:それは本当にそうかも。

シマダ:なので、スカートメンバーの岩崎さんにお願いして。一応、楽譜とか用意しようと思ったんですけど、何がなんだかわからないんで、今日いきなりリハしたんですけど……大丈夫でした?

岩崎:うん、大丈夫大丈夫。

シマダ:じゃあ、大丈夫です。

▲昨年の「第30回 南太平洋シマダ選手権大会」でのスカートのライブ

スカート澤部「ドラァグクイーンになってたかも」

――ちなみに、皆さんから見たシマダボーイってどんな人ですか?

佐久間:真面目な青年ですね。

シマダ:(笑)。

澤部:うちのバンドで唯一、まともな人ですね。初めて会ったときなんて21~22歳くらい?

佐藤:その時点で出来上がってたね。

佐久間:変わらない。

――スカートには、アルバムでパーカッションが必要な曲があって、そこからバンドメンバーに加入したと聞きました。

澤部:そうですね。

――人懐っこい感じなんでしょうか?

澤部:人懐っこいというか、適度に良い距離感を保ってくれる感じですね。

佐藤:最初に会ったときから普通に会話ができる。

――(笑)。それが普通じゃないんですか?

佐藤:できない人いっぱいいるもん。

佐久間:ミュージシャンはね。

――(笑)。

佐藤:そういう意味で言うと宗派が同じ感じ。

佐久間:〇〇〇が好き、とか言われたらもう会話できないもんね。

――(笑)。昨年のシマダ選手権のスカートはすごく良かったです。

澤部:良かったですよね、あれは。俺も生まれた街や環境が違ったらドラァグクイーンになれたんじゃないかって思えるライブでしたね。マルチバースの俺でした。

佐久間:マルチバースだったんだ。

〇スカート - “You Spin Me Round (Like a Record)” (cover) Live at Shibuya WWW(2023.4.6) 『第30回 南太平洋シマダ選手権大会』

トリプルファイヤーがいるから大丈夫

――スカートのメンバーがバックバンドを務める“僕とジョルジュ × シマダボーイズ”、をはじめとして、トリプルファイヤー、Fullfaceといった前回出演したメンバーに加え、鶴岡龍 (LUVRAW)さんも出演されます。これはシマダさん的に良いラインナップになった感じですか?

シマダ:そうですね。2年連続で開催するのが今回が初めてで、同じ会場で、昨年も来てくれた人が今年も来るんだったら違うものにしなきゃ! という気持ちがあったんで。それで鶴岡さんにお声がけして、そろそろトリプルファイヤーも新譜が出るタイミングでもありっていう。

あと、昨年は5バンドだったのもあって、1バンドの持ち時間が少なかったので、今回は余裕を持って4バンドで、まあ去年が盛り上がったのもあったので、何をやっても許してもらえるかなという甘えもあり、ですね。

佐久間:ボーイは出ずっぱりだから大変だよね。

シマダ:そうっすね、疲れました。あ、楽屋にビールが置いてあるんですけど、スカートの皆さんはいつもトリだったんで、終わるまで飲めないのが申し訳ないなって。今回の出番、僕とジョルジュはトップバッターなんで飲んでください。

岩崎:みんな関係なく飲んでる気がするけど。

シマダ:でも、このあと出番あるんだと思って飲むのと、ないと思って飲むのって、美味しさが違うじゃないですか。

岩崎:そうだね。

佐久間:毎年言ってるけど、トリプルファイヤーがいるから大丈夫でしょっていう気持ちでいますよ。トリプルファイヤーがいたら、見に来た人は損しないだろうなって。良さを担保してくれてる。

澤部:たしかにね。

佐久間:だから今回はトップだし、伸び伸びできますよ。

先輩(どついたるねん)の存在は大きい

――皆さんのトリプルファイヤーへの信頼が伝わりました。去年のイベントはどうだったんですか?

澤部:僕は衣装のアイパッチを探してて、ちゃんと見れてないんですよね……。

――(笑)。

佐久間:去年も多彩で、テクノも、フルフェイスもあって。

岩崎:あと、去年は、WWWの照明が変わったタイミングだったんじゃなかったっけ?

シマダ:スピーカーですね。

岩崎:そうだ、スピーカーだ。照明もレーザーとかあって。

佐久間:たしかに、スピーカーが変わったタイミングだったんですよね。

シマダ:変わって1発目のライブがシマダボーイズでした(笑)。

澤部:去年、シマダボーイズ見て感動したんですよ、もうぐちゃぐちゃで、姫乃さんの曲は鳴ってるけど、二人は叫んでるし、そこで先輩がサンプラーをポンと押したら、なんか曲がかかって。でも、聞こえないんですよ。何が鳴ってるんだろう?って集中して聞いた先に『パチンコ・マン / BOOGIE MAN』がかかってて、能動的に聴きにいく『パチンコ・マン』ってこれまでなかったから、あれは本当に感動した。

シマダ:最新スピーカーだからなせる技でしたね。

(一同笑)

佐藤:俺としては、シマダボーイズを見れるのがシマダ選手権の強みなんですよね

シマダ:ここでしかやってないっすもん。

佐藤:シマダボーイズの姫乃さんを見ると泣いちゃうんですよ、“これこそが多様性だ”って。

佐久間:そうだね。

佐藤:言葉で多様性とかは言わないけど、より強くメッセージを感じるんです。これこそが、みんなが目指す地平なんじゃないかって。

――先輩(どついたるねん)の存在も大きいですよね。

佐久間:大きいね、詩人だからね。見てくださいよ、今年のシマダ選手権に寄せたコメント。

【オロカメン(シマダボーイズ総帥) コメント】
ひやしキンタマ、ぬくもりチクビ
シマダボーイズ動きます。

すごいよね、ごちゃごちゃ言わない。散文詩ですよ、これは。

澤部:去年、先輩はシマダボーイズのライブで、ずっとペッパーミルパフォーマンスやってたんですよ。それがもう本当に絶妙にいいタイミングで、感動して。帰って妻に報告したら、妻が「先輩が世の中で一番最初に思い出したんだろうね」って。なるほどなあって思いました。すごくヒップな人だなって思いますね。

――ありがとうございます。

シマダ:まとまってますかね…?

――何か言い残したことありますか?

シマダ:ああ、グッズいっぱい作りました! アクリルキーホルダー全5種類、あとは春日部で撮った写真がプリントされたシャツ、あとは8062年のカレンダー。

佐久間:いいね、8062年のカレンダー。

シマダ この写真がいいんですよ、カメラマンに前日『あの夏、いちばん静かな海』を見てもらって撮った写真なんで、雰囲気が出てると思います。あと、去年は灰皿とフルフェイスの曲が2曲入ったコーム(櫛)を売ったんですけど。

佐久間:QRコードとかじゃなくて、httpから手打ちするやつでしょ? めんどくさい!


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