募金って被災者のためにちゃんと使われているの? 寄付金の流れ教えて 那須塩原の71歳女性からの疑問

 能登半島地震を巡り、各地で募金活動が活発に行われる中、那須塩原市、主婦女性(71)から「集まった募金の行方がいまひとつ分からない。正しく被災者のために使われているのでしょうか」という疑問が、下野新聞「あなた発 とちぎ特命取材班」に寄せられた。全国では、募金をかたった詐欺とみられるケースも確認されている。改めて寄付金の流れや詐欺被害の防ぎ方を取材した。

 被災地支援の寄付金は、「義援金」と「支援金」の2種類に大別できる。大きな違いの一つは使い道。義援金は被災者に現金が届く直接的な支援だ。一方、支援金は、現地で人命救助や復旧といった活動に当たる団体の資金となる。

 被災地に届く過程も異なる。

 義援金は、日本赤十字社や共同募金会といった団体への寄付がよく知られる。団体は全額、都道府県が設置する義援金配分委員会へ送金し、委員会は被災状況や被災者数に応じて市区町村に配分する。そこから被災者へ公平に配分されるシステムだ。団体を通じた寄付のほか、被災自治体の口座へ直接寄付できる場合もある。高い公平さの一方、被災者数の正確な把握などで時間が掛かる側面もある。

 支援金は、被災地で活動するNPO法人やボランティア団体へ直接寄付する方法と、中央共同募金会などを介して寄付する方法がある。寄付を受けた団体が高い自由度で運用できるため、被災者のニーズに迅速に対応できるメリットがある。マンパワーやノウハウを持つ団体を介した支援は、被災者だけでは解決できない問題への対処が期待できる一方、信頼できる団体かどうかの見極めは個人に委ねられる。

 義援金と支援金、それぞれの特性を踏まえ、自分の目的に合った寄付をするのがよさそうだ。また今回の震災では、ふるさと納税を通じた寄付も広がりをみせている。

HPで可視化

 透明性はどうか。能登半島地震を受け、交流サイト(SNS)上では特定の団体を挙げて「全額は被災地に渡らない」などと疑念の声も上がっている。

 義援金の窓口を設ける日本赤十字社や県共同募金会に取材したところ、いずれも義援金配分委員会に「全額送金する」と回答。ホームページ(HP)で送金状況を公表するなどして透明化を図っている。被災県によっては、HPで義援金の寄付者を公表している。

 県共同募金会の中川雅之(なかがわまさゆき)常務理事事務局長(66)は「信頼できる団体を通じて寄付をするのが望ましい」と考えを示す。

 義援金の使い道は、被災した都道府県のHPで確認できる。今回被災した石川県などのHPでは、人的被害や住家被害の状況に基づき配分の基準や方針を示した「第1次配分計画の概要」が公表されている。2016年4月の熊本地震で甚大な被害を受けた熊本県では総額約536億円の義援金が寄せられ、配分は第61次にまで及んだという。支援金については、各団体のHPで活動状況などを確認できる場合が多い。

募金詐欺に注意

 寄付をするときに気を付けたいのは、被災地支援を装った詐欺だ。能登半島地震でも、全国的に義援金や支援品を求める不審電話についての相談が相次いでいる。県消費生活センターによると、3月22日現在、県内で寄付金は1件、支援物資は7件の相談が寄せられている。市役所職員などを名乗るケースがあるという。

 国民生活センターはHPで「不審な電話はすぐに切り、万が一、金銭を要求されても決して支払わないように」「公的機関が、各家庭に電話などで義援金を求めることはない。まずは当該機関に確認を」などと注意を呼びかけている。

 では、寄付が詐欺かを見分ける方法はあるのか、アトム法律事務所(東京都千代田区)の松井浩一郎(まついこういちろう)弁護士(28)に話を聞いた。

 松井弁護士によると、活動団体がHPで寄付金の使い道や活動報告などの情報を開示していない場合は要注意という。さらに強引に寄付を迫るなど勧誘商法的なやり方かどうかもポイント。松井弁護士は「そうした内容を総合的に判断する必要がある」と説明した。

 募金詐欺の場合は詐欺罪が適用され、刑罰は10年以下の懲役と定められている。松井弁護士は「震災など災害時における特別法を作り、より厳罰化するという規定を設ければ、いっそうの抑止力になるのではないか」と指摘した。

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 今回あなとちに疑問を寄せてくれた女性は、2011年の東日本大震災の際、自宅が半壊したが、義援金を受け再建につなげることができたと明かした。一方、その義援金がどこから届いたのか分からず「モヤモヤしていた」という。取材内容を伝えると「ようやく寄付の仕組みが分かった」と話し、涙ながらに続けた。「私は被災者に直接届く義援金を、日本赤十字社を通じて送りたい。これで恩返しができます」

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