J3無敗対決に大宮がFC大阪に勝利!元日本代表FW杉本健勇「俺がいなかったから多分入ってない」と絶妙の飛び出しでオウンゴール誘発

J3第8節が6日に行われ、大宮アルディージャがFC大阪を1-0で下して首位に立った。大宮ホームで開催された無敗チーム同士の対決は拮抗するも、元日本代表FW杉本健勇が圧巻のパフォーマンスで格の違いを見せつけた。

J3では別格の存在

やはり役者が違う。この日大宮の右サイドを支えてきたMF中野克哉、DF茂木力也の不在により3-1-4-2システムをぶっつけ本番で使わざるを得ない状況だったが、2トップの一角で出場した杉本が要所要所でクオリティの違いを見せつけて勝利の原動力となった。

攻めればポストプレー、フリックなどで前線に変化を作り、中盤まで下がれば展開、ビルドアップに参加。セットプレーの守備時もボールをクリアするストーンとしての役割を担うなど八面六腑(はちめんろっぷ)の活躍で攻守をけん引した。

後半29分にはMF泉柊椰のコーナーキックに合わせるように飛び出し、オウンゴールを誘発。会場のアナウンスは杉本の名を読み上げたため、サポーターの杉本コールが割れんばかりに響いた。「きょう『あそこ狙え』って言っていた。(泉)柊椰のキックの質も良かったですし、入って良かったです」と白い歯をこぼした。

「(オウンゴールは)俺がいなかったからたぶん入ってない」と胸を張る杉本。あの局面で絶妙な位置取りとスタートがなければオウンゴールは誘発できなかっただろう。常に相手ゴールの脅威となり続け、受け手としても供給役としても効果的なプレーでFC大阪の脅威となり続けた。

ただ一方で自身のゴールにはならなかったことに「自分でも触れたか分からん。『とりあえず突っ込め』と思った。でもオウンゴールになってたから…。いや俺のゴールにしてほしかったな」と悔しがっていた。

長澤徹監督は「公式はオウンゴールになっていたと思うんですけど、(杉本)健勇がいいタイミングで入って、相手もキャッチできないような状況に追い込んだ。非常に素晴らしかったと思います」とこの日のヒーローを称えた

個のクオリティでいえばJ3では類を見ないパフォーマンスを見せ続ける背番号23。FC大阪戦を含めた直近3試合で3得点と好調であり、1シーズンでのJ2復帰を目指す大宮にとって無くてはならない存在となっている。

成長を口にするストライカー

この日のFC大阪は4-4-2でブロックを固め、素早い寄せと攻守の切り替えを駆使して大宮に鋭いカウンターを仕掛け続けた。それでも杉本は意に介さずプレッシャーをかわし、縦横無尽に顔を出してFC大阪の激しい攻守を掻い潜りながらチャンスを創出し続けた。

杉本は「なるべく前にはかなり強く来るのは分かっていましたし、今日も球際の部分に自分たちもかなり苦しめられた部分はありました。俺は来られたほうが好きなので『どんどん来てください』という感じで、別にそんなにプレッシャーにも感じなかった」と余裕を口にした。

これまで日本代表、J1とトップレベルで猛者たちと戦い続けただけあり、J3随一の激しいプレッシャーであっても涼しい顔でプレーし続けた。元日本代表であっても30歳を超えた名選手たちが苦戦するといわれるほどJ3は難しいディヴィジョンと各関係者が口にすることもあるが、背番号23にとっては何の問題もないようだ。

「(プレッシャーが激しい)ところで落ち着かせることによってチームメートも落ち着くと思いますし、あまり自分がバタバタしてたら影響すると思う。そういうところは落ち着いてプレーしようと思っていました」と頼もしさがあった。

現代サッカーはポジションの概念にとらわれず、様々な役割を求められる。例えばズラタン・イブラヒモビッチ、オリヴィエ・ジルー、日本人選手なら大迫勇也や鈴木優磨のようにゴール前でのフィニッシュ以外に、ポスト、フリック、位置を下げての展開、自陣ゴール前での守備などのプレーを高水準にこなす。マルチタスクが求められる現代サッカーにおいて、この試合で見せた杉本のパフォーマンスは上記した名選手たちと通ずるものがある。

杉本はセレッソ大阪U-18時代にチーム事情により急造センターバックとしてクラブユース選手権に出場してMVPを獲得し、この活躍を受けてセンターバックとしてU-18日本代表に選出されるほど、異なるポジションでも実力を発揮できる才能を持っている。今季の大宮ではトップ下ポジションでさまざまなタスクを器用にこなす攻守の核として君臨している。

この日は前線ではフィニッシュ、ポストプレー、中盤はロングパスの展開やサイドへ開いたドリブル、後方ではビルドアップ参加にセットプレーでの空中戦などさまざまな局面でチームを助けた。

杉本は「結構相手もラフに蹴ってくるというか、ほとんど試合を見てても蹴ってくるチームだった。跳ね返すというところと、後ろ3枚が中心になって跳ね返していくところと、セカンドボールを拾う。あとは自分たちのビルドアップのときに、なるべく(石川)俊輝とアル(トゥール・シルバ)のサポートをする。可変をしてもいいですし、自分が下がっても『そこを助けてあげてくれ』ということは言われた。いいところもありましたし、もう少し自分自身うまくできたのかなと思うのでそこは本当に修正というか反省して…。経験というかまた1つ成長できたのではないかと思います」とマルチタスクの中で得た手応えを笑顔で口にした。

【インタビュー】タビナス・ジェファーソンが語る争奪戦となった高校時代、刺激を受けた同期、水戸での経験

近年ではJ1やJ2で華々しい活躍をファンに魅せられていなかったが、新天地・大宮でその才能と実力を発揮してチームを上昇気流に乗せている。31歳とベテランの域に入った長身ストライカーは新たな境地に達しようとしている。進化するJ3最強の万能アタッカーの進化を追い続けたい。

© 株式会社ファッションニュース通信社