警察官「大変」減る受験者 全国的な流れ、島根県警も最低の148人2.11倍 人材争奪戦以外にも理由が・・・

 島根県警の警察官採用試験の受験者数と競争倍率が落ち込んでいる。2023年度の受験者148人(合格者70人)、倍率2.11倍はいずれも過去最低だった。全国データがまとまっている22年度で見ると、倍率は全国で最も低い。志願者減は全国的な傾向だが、有望な人材の奪い合いが激化しており、島根県警はなかなか有効な手だてを見いだせないでいる。 

 「採用が減れば警察官が減り、将来的に治安への影響も考えられる」。島根県警警務課の針原裕司次長は危機感を募らす。

 警務課によると、23年度の倍率は、385人(合格者87人)が受験し4.43倍だった10年前の2分の1以下になった。

 少子化に加え、民間企業や自治体職員との競合などが背景にある。公務員で安定している一方、「仕事が過酷」「休みが取りにくい」「転勤による引っ越しの可能性がある」との理由もあるという。

 倍率の低下は全国的な流れだ。警察庁によると、18年度は全国で受験者8万3167人、倍率は6.17倍だったが、22年度は受験者5万8329人、倍率は5.16倍になった。

 都道府県別の22年度倍率は福岡8.87倍(受験者2263人)など都市部が高い。島根は2.44倍(同188人)。対する人口規模が大きく変わらない徳島は5.02倍(同301人)、鳥取は4.79倍(同182人)、高知は4.74倍(同308人)だった。

 島根の場合、大卒者を中心に辞退者が増えているという。島根大を卒業し、岡山県内の企業に勤める男性(23)は、県警の1次試験に合格したが、2次試験で辞退した。「休日出勤や警察学校の生活が大変そうだった」と明かす。

 島根県警も手をこまねいているわけではない。リクルーターを各署に配置。職業体験や就職説明会、女性向けのオンライン説明会を実施し、警察の実務体験や警察官と接する機会を増やしている。

 24年度からは受験可能年齢の上限を2歳引き上げて35歳(大卒4月採用)にしたほか、特別な公務員試験対策が不要な基礎能力検査(SPI3)試験も導入。鳥取県警などが行っている東京や大阪での「県外試験」も県人事委員会と実施に向け調整を重ねている。

 就職活動が本格化している。県警警務課の針原次長は「優秀な人材の獲得のため力を尽くす」と述べ、選んでもらえる県警に向けて頭をひねっている。

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