『ACMA:GAME アクマゲーム』は“欲望”との向き合い方を問う 間宮祥太朗が冷静沈着な男に

カンボジアでロケが敢行されたという、海外放浪中の主人公・織田照朝(間宮祥太朗)が急遽予定を変えて13年ぶりに日本に帰国するところから始まる『ACMA:GAME アクマゲーム』(日本テレビ系)第1話。

日本で多発する謎の財産譲渡事件を報道する映像に見覚えのある男(小澤征悦)が映り込んでいるのを見つけ、すぐに帰国を決めた照朝。その男は照朝の父・清司(吉川晃司)の命を奪った宿敵。清司が命を落とすことになったのは、世界中に99本ある不思議な力を秘めた「悪魔の鍵」のうち1本を所有しており、それを狙われてのことだった。

どうやらこのいわくつきの鍵が財産譲渡事件にも関わっているらしく、企業のトップや資産家たちが全財産を他人に譲渡した後、「悪魔……」と言い残して次々と命を絶っているという。どうやらこの「悪魔の鍵」は、勝者が敗者から何でも奪うことのできる命懸けの頭脳バトル「アクマゲーム」というデスゲームを始めることができるゴングにもなるようで、これが謎の財産譲渡事件の真相だった。

照朝にとってこの「アクマゲーム」の初対戦相手となったのは、反社会勢力「丸子ファミリー」2代目の丸子光秀(須賀健太)だ。

丸子が悪魔の鍵を机に刺すと、そこから悪魔・ガドが飛び出し、たちまちそこはゲーム会場となる。『アラジン』の魔法のランプのようでもあり『デスノート』を彷彿させる流れだが、ここで繰り広げられる心理戦は思いの外シンプルだ。相手の発言内容が嘘か真実かを見抜き、3点先取した方が勝ちという「真偽心眼~True or False~」ゲーム。

しかし、ゲームを始めた側には“悪魔のチカラ”が授けられ、今回の対戦相手・丸子は「アーリアル・チル(操気冷却)」の力を持っていることが明かされる。ゲームを持ちかけられた側が圧倒的不利な状況すぎる。いきなり室温を氷点下にし相手の判断力を鈍らせ、そしてたまたまこのゲーム会場に居合わせてしまった亡き父の秘書・岡本龍肝(橋本じゅん)や親友・眞鍋悠季(古川琴音)を危険に晒す。

しかし、その悪魔の力がフェイクだと見抜く照朝は冷静沈着で洞察力に優れ、今まで海外でどれだけの局面を潜り抜けて来たのだろうと、こちらの想像を掻き立てる。火災報知器が作動したのにスプリンクラーが反応しなかったことや、パソコンがコンセントに繋がっているのにもかかわらずバッテリーを消費していることから、このゲーム会場である部屋自体に水道や電気が通っておらず、部屋丸ごとどこか氷点下エリアに移動されたのだと気づく。会場ごと自分に有利なようにいつの間にか移動させてしまうという、手段を選ばぬ丸子もかなりクレイジーだ。

第1話から本作は“欲望”との向き合い方を問う。生前、清司は「満たされないのが欲望で、それを満たそうとするから争いが起こる」と照朝に話していたが、まさに欲望とは際限のないもので、だからこそ「アクマゲーム」が絶え間なく開催され、99本の「悪魔の鍵」は今も世界中に散り散りになって存在しているのだろう。

最終的に照朝は今は亡き父親の子を想う親心と、その思い出を捨てられずずっと大切にしてきた自分自身に助けられた形になったが、実際には特別な力を秘めた鍵なんかよりも、この極限状態でも“自分は一人じゃない”と思わせてくれる特別な誰かとの繋がりの方が生きる希望になり得るのかもしれない。しかし、なぜそんな欲望と適切な距離感で付き合えていた清司がこの鍵を持つことになったのか不思議だ。

さて、今回の丸子しかり、全ては裏で糸を引いている正体不明の崩心祷(小澤征悦)という男の仕業のようで、彼はこれからも何かにくすぶり、現状に満足していない者たちに悪魔の鍵を授け、そして照朝の元に刺客として送り込むようだ。照朝の前にどんな欲望に取り憑かれた対戦者が現れるのか、照朝の旅の続きを見守りたい。

(文=佳香(かこ))

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