宮城野親方が弟子に贈った〝最後の言葉〟 転籍力士は番付システムの乱れ、人間関係の難しさを不安視

伊勢ヶ浜部屋を出て車に乗り込もうとする宮城野親方

大相撲の宮城野部屋から伊勢ヶ浜部屋へ転籍した力士が匿名を条件に取材に応じ、複雑な胸中を明かした。宮城野部屋は元幕内北青鵬による暴力問題の影響で無期限閉鎖となった。力士らは7日に移籍先の伊勢ヶ浜部屋へ引っ越しを行う一方で、前日6日には宮城野親方(39=元横綱白鵬)から師匠としての〝最後の言葉〟があったという。この力士は環境が一変することへの不安を明かす一方で、新生活への前向きな思いも口にした。

宮城野部屋の力士らは7日午前、東京・墨田区の部屋で引っ越し作業を開始。力士たちが数回に分けてマットレスや毛布などをトラックに積み込むと、宮城野親方とともに江東区の伊勢ヶ浜部屋へあいさつに向かった。取材に応じた力士は「向こう(伊勢ヶ浜部屋)の力士、親方にもあいさつした。伊勢ヶ浜親方(元横綱旭富士)は『自分のペースで頑張っていきなさい』という感じで優しかった」と様子を明かした。

引っ越しを翌日に控えた前日6日夜には、宮城野親方から弟子たちに向けて「みんなで頑張っていこう。みんなでしっかりと相撲道を学んで、精進していこう。伊勢ヶ浜部屋で学べることはたくさんある。いいところをしっかり吸収して、ともに頑張っていこう」との言葉があったという。今回の〝吸収合併〟で伊勢ヶ浜部屋の所属力士は約40人にまで増え、角界一の大所帯となる。

同力士は「みんな不安を感じている。師匠、生活環境、稽古場、人間関係が変わる。ついこの間まで中学生だった子もいるし、宮城野部屋だと思って春に入ってきた子もいる。新しい子、前からいる力士もショックはある」と打ち明ける。さらに、横綱照ノ富士を筆頭に6人もの関取衆が在籍する部屋へ飛び込むことへの不安もある。

「(角界は)力の世界。番付上位が、いい暮らしができるシステムになっている。それは長年の伝統だし仕方ないけど、そのシステムの上にほかの部屋のお相撲さんが大挙してやってくる。部屋ごとにカラーは違うし、なかなか人間関係でも難しい」と吐露した。ただ、今回の移籍に関しては後ろ向きな感情ばかりではないようだ。

部屋閉鎖を機に引退を検討している力士もいる中、同力士は現役続行を選択したという。「(2月下旬に)処分が出て1か月ちょっと。この間に個人、個人で悩み苦しんで出した答え。うちの部屋は処分が下される前よりも、気持ちの結束は固い。みんなで手を取り合って頑張りたい」と前を向いた。

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