「S」なら俺も!打感を求める気持ちに腕前は関係ない ピン「ブループリントT/S」アイアン

「BLUEPRINT」とは青写真の意。プロに向けて研究した数多くのアイアンの「設計図」を指す(撮影/有原裕晶)

ピンのブループリントアイアンが5年ぶりにリニューアル。「ブループリント T アイアン」、「ブループリント S アイアン」と2つのモデルに生まれ変わった。主にツアープロ向けでもあり、「難しいクラブは作らない」とのポリシーを持つピンとしては少々異色モデルだが、アマチュアにも人気は高い。新しいヘッドはどんな性能なのか?「T」と「S」でどんな違いがあるのか。クラブの特徴をギア知識が豊富なミタさんが解説。アスリートゴルファーのコウタロウ(HS50m/s)とベテランゴルファーのシオさん(HS40m/s)が試打を行い、ヘッドの性能を探った。

ツアープロの要望で生まれた「T」と「S」

シオさん(写真左)は過去にマッスルバックを使用していた。コウタロウは「ブループリント」ユーザー(撮影/有原裕晶)

【ミタさん】
2019年に生まれた「ブループリント」は1モデルの展開でしたが、今作は「T(TOUR)」と「S(SCORE)」の2モデル展開です。

【シオさん】
「ブループリント」はツアープロ向けに作られたアイアンですよね。「T」はマッスルバック形状で、いかにもプロが好みそうなモデルですが、「S」はキャビティ形状でやさしそうな雰囲気があります。

【ミタさん】
ツアープロの要望を聞いたところ、「精悍でシャープに」との声と「寛容性がほしい」という声があり、意見が分かれたそうです。従来のマッスルバック形状で寛容性をもたせるには限界があったので、ツアープロでも使えるキャビティ形状として「S」が加わったという経緯があります。

【コウタロウ】
確かにその二つの要望は相反する内容ですね。ですが、小ぶりなツアーアイアンでマッスルとキャビティの2機種というのは他のメーカーでもよくあること。選択肢が増えたと考えれば、ユーザーにとっては喜ばしいことですよね。

「T」はブレードが「低く」かつ「長く」→やさしさUP

左が「T」で、右が「S」。サイズもソール幅も「S」のほうが大きい(撮影/有原裕晶)

【ミタさん】
まず「ブループリントT」から見ていきましょうか。前作のマッスルに比べて、ホーゼルからトップブレードにかけての見え方が流れるような形状になりました。また、ブレード全体の高さが低くなり、その分ブレード長を少しだけ長くしています。その結果、操作性を損なうことなく寛容性を持たせることに成功しています。前作「ブループリント」ユーザーであるコウタロウから試打していきましょうか。

「ブループリントT」は、ツアープロのフィードバックを反映したコンパクトなヘッド形状(撮影/有原裕晶)

【コウタロウ】
構えてみましたが、前作からヘッドサイズが変わったようには感じません。違和感が出ないように“わずかに変えた程度”なのでしょう。前作同様、小ぶりできれいな顔をしていますね。実際に打ってみても柔らかさの中に「ブループリント」らしい食いつき感があって、インパクト付近でもフェースコントロールができる操作性の高さがあります。まさにプロや上級者が好みそう。

「距離感が揃うところもツアーアイアンには大事なポイントですね」(コウタロウ)(撮影/有原裕晶)

【ミタさん】
慣性モーメントが前作より増え、寛容性が上がっているとのことですが、打点ブレの強さなど感じられましたか?

【コウタロウ】
ミリ単位の打点ブレをミスと判断するプロならわかるかもしれませんが、正直、僕には分かりませんでした。コースで打ってみるとその違いが分かるかもしれませんね。でもこのモデルは『操作性→打感→寛容性』という優先順位が変わらないことが大事だと思いますので、「T」を求める人はさほど寛容性は気にしてないかもしれないです。シオさんも打ってみてください。

前作の「ブループリント」とボールデータに大きな変化はありません(コウタロウ)

【シオさん】
ヘッドスピードが速かった頃は、僕もいろんなマッスルバックアイアンを使っていたんですがね。顔や打感はすごい好みですが、この「ブループリントT」はトップブレードが薄くて、僕には手ごわかった。球の高さがやはりもう少し欲しく、やっぱりパワーのあるゴルファー向きな気がしました。

【コウタロウ】
そうですね。7番アイアンで落下角度が45度を大きく下回っていましたから、それだとグリーンには止まりにくいですね。それより上の番手は、想定する距離が出ない恐れもあります。シオさん、「ブループリントS」に期待しましょう。

キャビティってやっぱりやさしい「ブループリントS」

左が「ブループリントT」で、右が「ブループリントS」。「S」の方が低深重心構造になっている(撮影/有原裕晶)

【ミタさん】
続いて「ブループリントS」アイアンです。大きな特徴は番手別設計。3~5番はオフセットを少しつけてつかまりやすく、バックフェースをくり抜き、生まれた余剰重量を適正配分化してボールを上がりやすくしています。また、ミドルアイアンからショートアイアンにかけてはセミキャビティ構造にし、操作性に優れた仕様となっています。今回は7番アイアンを打って、「T」との違いをみてみましょう。

【コウタロウ】
構えた感じは「T」よりもヘッドサイズが大きく、トップブレードも厚いので安心感がとてもあります。打感は柔らかさの中に、わずかに弾く感じが手に残る。やさしく球を拾ってくれるわけではありませんが、そこまで鋭角なダウンブローに打たずとも球が上がってくれる感じがあります。芯も広いし、これはシオさんもイケそうな感じがしますよ。

「ブループリントS」も一般的なアイアンに比べれば、シャープで小ぶりな部類に入る(撮影/有原裕晶)

【シオさん】
これぐらいのサイズであれば、安心感があって私でも使えそうな気がしてきます。その上でも見た目の顔はシュッとしていて、ツアープロや上級者が構えやすそうなシンプルな形状でとてもキレイ。打ってみると明らかに「T」よりも打ち出し角が増えて、フェースのやや下目にあたってもそれなりに上がってくれました。

【コウタロウ】
特に上下の打点ブレに強そうですね。落下角度も45度を下回ることなくいいショットが続きましたよ。

シオさんは打ち出し角度、バックスピン量が増え、コウタロウは共に下がる結果となった

【ミタさん】
メーカーの意図がしっかり現れた結果となりましたね。コンパクトで振り抜きやすく、操作性重視の「T」と、ボールの高さと許容性を持たせた「S」。ただし、両モデルともに注意してほしいのは、あくまでもツアープロをメインターゲットにしていること。重心距離の短い操作系のアイアンなので、間違っても飛距離に特化したモデルではありません。ダウンブローにコンタクトでき、さほど芯を外さないゴルファーが対象になってくるので、常に高いパフォーマンスを維持するための努力も必要です。

【シオさん】
かっこいいアイアン使いたいので、練習をサボらず頑張ります!

まとめ

飛ぶわけではなく、安定した飛距離性能が高評価に繋がった
共に「ブループリントT」よりも”やさしい”という評価となった

■ 試打したクラブのスペック

ピン ブループリントT アイアン

ピン ブループリントT アイアン
●番手(ロフト角):7番(33度) ●シャフト:N.S.PRO MODUS3 TOUR 115/N.S.PRO MODUS3 TOUR 105 ●硬さ:共にS

ピン ブループリントS アイアン

ピン ブループリントS アイアン
●番手(ロフト角):7番(33度) ●シャフト:NSプロ モーダス3 ツアー 115/NSプロ モーダス3 ツアー 105 ●硬さ:共にS

■ マイクラブ情報

コウタロウ:ピン ブループリント アイアン
●番手(ロフト角):7番(34度) ●シャフト:KBS Cテーパー 125 ●硬さ:S+

シオさん:タイトリスト T300 アイアン(2021年)
●番手(ロフト角):7番(29度) ●シャフト:NSプロ モーダス3 ツアー 105 ●硬さ:S

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