小学校卒業で北海道→福岡に移住「本気なの?」 母も驚いた女子ゴルフ阿部未悠、少女時代の決断

ツアー初Vを果たした阿部未悠【写真:Getty Images】

富士フイルム・スタジオアリス女子オープン最終日

女子ゴルフの国内ツアー、富士フイルム・スタジオアリス女子オープンは7日、埼玉・石坂GC(6535ヤード、パー72)で最終日が行われ、首位で出た阿部未悠(ミネベアミツミ)が大会新記録の通算15アンダーでツアー初優勝を果たした。8バーディー、1ボギーの65で大会コースレコ―ドも更新。同じく未勝利だった21歳の佐久間朱莉(大東建託)に1番からリードされたが、17番で鮮やかに逆転した。10歳でゴルフを始め、小学校卒業で北海道から福岡に移住。本人と母・早苗さんがこれまでの歩みを明かした。(取材・文=柳田 通斉)

表彰式。阿部が優勝スピーチを始めると、早苗さんが微笑みながらスマートホンを向けた。2人で目標にしてきた瞬間。優勝副賞で振り袖が贈られることを知ると、母は「すごい、すごい」と喜んだ。

「とにかくゴルフが好きな子です。なので、中学から北海道を離れることになっても、私が一緒に付いていきました。今も(試合に同行して)応援を続けています。11番は長いパットを入れたナイスボギーでいい笑顔を見せていたので、親としても諦めていませんでした」

北海道で生まれ育った阿部は小4の冬、始めたばかりのゴルフにすぐに夢中になった。同じスクールのアスリートコースにいたのが2学年上の小祝さくら。プロを目指すことを決意したという。

「さくらさんはその時点で凄くうまくて、大会で優勝もしていたので、『私もアスリートコースに入って、プロを目指す』と言いました。ただ、北海道は冬になるとコースでラウンドができないので、中学に上がる前に両親に『冬でも芝の上でボールを打ちたい。北海道を出てゴルフをしたい』とお願いしました」

一緒に移住した母に感謝、阿部「母は私よりも不安だったと思いますが…」

早苗さんは「本気なの?」と言いながら、最終的には母子で福岡に移住。高校卒業までの6年間を過ごした。阿部は当時を振り返る。

「母は私よりも不安だったと思いますが、そういう環境を用意してくれた両親に感謝したいです。今週は父もたまたま初日から来てくれていて、とても喜んでくれています」

プロテストに2度目の受験で合格。同学年の古江彩佳、西村優菜、吉田優利、憧れの小祝は先を走っているが、阿部には「何よりもゴルフが好き」という思いがある。

「同学年の3人はジュニアの頃から凄かったですし、さくらさんにはいろんな面で影響を受けています。優勝争いの最終日後半、10番からスイッチが入る瞬間を見たことがあります。私もずっとそうしたいと思ってきました」

この日は小祝のように淡々とプレーしつつ、終盤に猛チャージをかけた。ゴルフを始めた頃から、母の前で4時間以上の打撃練習を繰り返してきた23歳。これからは勝利を重ね、同学年や先輩ゴルファーの背中を本気で追っていく。

THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida

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