伊藤沙莉『虎に翼』に大ヒットの予感 尾野真千子ナレーションと“いきなり山場”が生んだスタートダッシュの巧妙戦略

石田ゆり子・伊藤沙莉・岡部たかし ※画像はNHK『虎に翼』公式X(旧ツイッター)『@asadora_nhk』より

伊藤沙莉(29)主演のNHK朝ドラ『虎に翼』(月~金曜)が4月1日からの第1週「女賢しくて牛売り損なう?」を、平均世帯視聴率が16%台(ビデオリサーチ調べ/関東地区)と好調な数字で終えた。この好調さの陰には、巧妙な演出があったようだ。

朝ドラの110作目となる本作は、日本初の女性弁護士の1人であり、初の女性判事及び家庭裁判所長を務めた三淵嘉子さんの実話に基づくオリジナルストーリー。朝ドラ序盤の定番である、ヒロインの幼少期を描かなかったことが話題になったが、今作が画期的なのはそれだけではない。

第1週の内容は以下。昭和9年、東京の女学校に通う猪爪寅子(ともこ、伊藤)は、両親から勧められた2度のお見合いを失敗。納得できない寅子だが、同級生で親友の花江(森田望智/27)に「親不孝」と言われたことで3度目のお見合いに挑むが、調子に乗って社会情勢の知識を語りまくり、相手に「女のくせに生意気」と言われて失敗する。

そんな中、猪爪家の下宿人・優三(仲野太賀/31)の大学に弁当を届けた寅子は、そこで講義を聞き、法律に興味を持つ。そして、教授・穂高重親(小林薫/72)に「明律大学女子部」への進学を勧められ、母・はる(石田ゆり子/54)が実家に帰っている間に、既成事実を作ってしまおうと出願したが……という展開。

男女平等問題がテーマだけに、朝に見るには重い内容になるのではないかと思われたが、むしろ軽快さを感じられた。

■1週目にして大ヒットの予感

「尾野真千子(42)のナレーションをうまく使っています。普通なら状況説明に使うところを、大胆に寅子の気持ちまで代弁。賢い寅子が声高に不満を述べると、攻撃的に感じてしまいますが、尾野の抑揚の効いたナレーションで代弁することで、寅子のカドが取れるんです」(ドラマライター/ヤマカワ)

さらに、結婚、将来の進路など、従来の朝ドラなら山場に持ってくるテーマを、早くも初週で見せてきた。これも、ひとつ間違えれば重い雰囲気になりそうなところを、テンポよくコミカルな演技で見せ、うまく盛り上げていた。伊藤ら演者と演出の勝利といえるだろう。

「通常、1週めはヒロインの幼少期を入れるんですが、それをせず、男女問題というテーマをしっかりと描き切りました。これで視聴率が良いということは、物語全体を気に入ってもらえたということ。今後、簡単に視聴者は離れないでしょうから、好調な数字は最後まで続くはず。近年にないヒット作になる可能性も高いです」(前同)

女性が自分たちの道を切り開くため、法律を学んでいくというテーマ、街かどの物言わぬモブの女性にまで世界観を持たせる演出など、明らかに今までにない朝ドラを目指している『虎に翼』。初週は上々の出来だったが、第2週「女三人寄ればかしましい?」にも期待したい。

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