高野連に求めたい「野球留学者の人数制限」 センバツV健大高崎はベンチ入り18人が県外出身(小倉清一郎)

プロ注目の健大高崎の箱山主将(中央)は東京出身(右は青柳監督)/(C)日刊ゲンダイ

【松坂、筒香を育てた小倉清一郎 鬼の秘伝書】#196

大阪桐蔭の西谷浩一監督が先のセンバツで、甲子園の監督通算勝利数が単独1位となる69勝目を挙げた。

思い出すのは2006年夏の甲子園1回戦。私が部長を務めていた横浜と対戦した。横浜は同年のセンバツで全国制覇していて、松坂大輔を擁した1998年に続く2度目の春夏連覇を狙っていた。しかし、壮絶な打撃戦の末に6-11で敗れた。大阪桐蔭はこの夏、2度目の全国優勝。西谷監督は「(69勝のうち)小倉先生と渡辺先生のコンビの横浜を倒せたこの試合は印象的だった」とマスコミに語ったと聞いて、うれしくなった。

今センバツでは、その大阪桐蔭と報徳学園の準々決勝は好ゲームだった。ただ、西谷監督は好投手を複数抱えるがゆえのミスを犯した。初回の2失点以降、立ち直っていたエースの平嶋桂知に五回表に代打を送り、八回表にも1安打無失点と好投を続けていた2番手の南陽人に代打を送った。いずれも2点を追う展開だったが、その裏に3番手で2年生の中野大虎につなぐことになり、これが誤算。中野の暴投などで致命的な2点を失い、1-4で敗退となった。

今年も大阪桐蔭はMAX140キロ以上の投手を5人も6人も抱えていて、使いたくなる気持ちは分かる。ただ、投手の起用を増やせばリスクが大きくなる。最近、大阪桐蔭が負ける時は、投手の継投ミスであることが多い。最多勝利の西谷監督には敬意を表したいが、投手交代は難しいのだ。

最近は関東や東京、というより、全国からトップの中学生をかき集めている。平嶋は東京都中野区出身。センバツのベンチ入りメンバーで1ケタ背番号の9人中7人が大阪府外出身だ。初優勝した健大高崎に至っては、1ケタ背番号の9人中8人、ベンチ入り20人中18人が県外出身。私は以前から声を上げているが、「県代表」というのだから、他県出身者の人数制限を設けるべきだ。

例えば人口300万人以上の大都市圏にある学校は、試合に出られる県外出身者は5人、それ以外の県は6人など。「私学の経営は厳しいから、生き残り競争のため」という議論になるだろうから、今まで通り、入学は無制限でいい。試合に出場できる人数を5人や6人に制限するのだ。

そうすると、付属中学に野球留学させ、地元出身者のように見せかける「抜け道」を使う学校が出てくるだろうが、まずはルールを作ることが肝要だ。

大阪桐蔭・西谷監督の69勝と健大高崎の初優勝で強く思う。今のままでは、ますます特定の高校ばかりが勝ち続けることになる。結果として全国的に野球が衰退することになりかねないから、日本高野連は本気でこの問題と向き合うべきである。

(小倉清一郎/元横浜高校野球部部長)

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日刊ゲンダイでは元横浜高校野球部部長の小倉清一郎氏と専大松戸の持丸修一監督のコラムを毎週交互に連載している。

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