なでしこは五輪優勝候補の米国に力負け…それでもパリ五輪「上位進出」の可能性アリ(鈴木良平)

自ゴール前でアメリカの攻撃を封じる女子日本代表選手(C)共同通信社

なでしこジャパン(サッカー女子日本代表)が米国で開催中の「シービリーブス杯」で日本時間の7日、地元アメリカと対戦して開始30秒で先制点を挙げながら、1-2の逆転負けを喫した。

彼の地の女子サッカー人気は凄まじく、スタジアムは5万644人もの大観衆で膨れ上がった。

完全アウェーの中でパリ五輪(7月26日~8月11日)の優勝候補と戦い、1点差負けなので大健闘と報じるメディアもあったが、チームの総合力の差はスコア以上のモノがあったと思う。

しかしーー。いきなり矛盾することを言うようだが、圧倒的なフィジカルの違いはいかんともし難いとは言え、世界トップに君臨してきた絶対女王アメリカとの実力差は確実に縮まってきており、なでしこジャパンがパリで躍動するのでは――と期待感を抱かせてくれたのも事実である。

開始30秒でアンカーのMF谷川萌々子が、ダイレクトで敵陣右サイドの深い位置にボールを送った。これを3トップの右で先発したFW清家貴子が、トップスピードを維持したまま相手ゴール前まで運び、グラウンダーのシュートをゴール左に決めた。

その清家が、試合後に「攻撃のパワーやスピード、反応の速度などアメリカは凄いと感じましたが、(プレー)スピードに関しては十分に通用する」とコメントしていた。

谷川のアシスト、清家のスピードとシュートは実に素晴らしいプレーの連動だった。こういった効果的な攻撃の回数を増やし、フィニッシュの部分でゴールの枠を捉える決定力が増せば、なでしこジャパンはパリで恥ずかしい試合をすることはないだろうし、それどころか上位進出も狙えるだろう。

■五輪では失点を極力抑えなければ…

もちろんパリ五輪に出場する世界ランク上位の1位スペイン、3位フランス、5位ドイツなどと対戦しても失点は極力抑えることが前提条件となる。

この日のアメリカ戦でも、サイドを突破されてゴール前に簡単にクロスを放り込まれたり、当たり負けしてボールをロストして正面突破を許し、強烈なミドルシュートを打たれる場面も多かった。

なでしこジャパンは体を張った守備で失点を2で食い止めたが、パリ五輪では個々の選手の頑張りに頼るのではなく、中盤とDF陣がポジショニングなど上手く連係しながら攻撃を食い止め、ボールを奪ったらパスを繋いで攻め上がるパターン、手数を掛けずにカウンター攻撃を仕掛けるパターンを織り交ぜながら、ゴールを目指してもらいたい。

世界ランク7位のなでしこジャパンは、パリ五輪でスペイン、10位のブラジル、アフリカ大陸予選突破国(36位ナイジェリア、51位南アフリカ、58位モロッコ、65位ザンビアから2カ国がパリ五輪に出場)と対戦する。

ちなみに、女子の世界ランクはアメリカが2017年6月~2023年6月まで1位に君臨していたが、2023年8月のW杯R16敗退でランクダウンしてスペイン、2位イングランド(五輪欧州予選敗退)、そして3位フランスの後塵を拝している。

とはいえ、パリ五輪の優勝候補の最右翼であることに間違いはない。

なでしこジャパンの攻撃面は、アメリカ戦では先制してから前に、前にと急ぎ過ぎて選手間の距離やバランスが崩れたり、シンプルに蹴り出す場面で無理にボールを繋ぎ、引っ掛かって逆襲を食らう場面も見られた。

そういった部分を修正し、次戦・ブラジル戦(日本時間10日午前5時7分キックオフ)に臨んでもらいたい。

(鈴木良平/サッカー解説者)

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