【電子版限定】TSMC第3工場はどこに? CEO「第2工場も熊本県菊陽町」で高まる関心

台湾積体電路製造(TSMC)第1工場の視察に訪れ、魏哲家CEO(左)と握手する岸田首相=6日午後、熊本県菊陽町(石本智)

 半導体受託生産最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の魏哲家・最高経営責任者(CEO)は6日、熊本県内で2024年末に着工する計画の第2工場の立地場所について、第1工場と同じ菊陽町になると明言した。第1工場を視察に訪れた岸田文雄首相らとの意見交換の場で言及した。既定路線とみられていただけに、地元の関心は早くも第3工場の建設場所に向かっている。

 第2工場は2027年末に稼働する計画で、国内最先端となる回路線幅6ナノメートル(ナノは10億分の1)の演算用ロジック半導体などを生産する計画。投資額は139億ドル(約2兆1000億円)規模で、すでに日本政府は最大7320億円を補助することを決めている。

 経済産業省が発表した資料によると、第2工場の敷地面積は第1工場の1・5倍の約32万1千平方メートルとなっている。ただ、TSMCは具体的な建設場所を明らかにしておらず、今回も魏CEOは菊陽町と述べるにとどめた。2024年2月に開所し、10~12月の量産開始を予定する第1工場の東隣との見方が有力だ。

2月に開所したTSMCの第1工場

 一方、地元の関心は第3工場の建設場所に向かっている。米ブルームバーグ通信は2023年11月、TSMCが熊本県内で三つ目の工場建設を検討していると報じた。回路線幅3ナノメートルの最先端半導体の生産を視野に入れているという。23年12月には台湾のハイテクメディアが第3工場は益城町の熊本空港の周辺になると伝えた。

 2024年1月になると、複数の台湾メディアが第3工場は大阪府になると報じた。TSMCは22年に大阪市内に半導体の設計を支援する「デザインセンター」を開設しており、連携が容易になるとの見立てだ。もっともいずれの報道に対してもTSMCは「開示できる情報はない」としている。

 それでは第3工場が熊本県内に建設される可能性はあるのか。まずクリアしなければならないのが土地の問題だ。熊本県は第1工場に近い菊池市と合志市に工業団地を整備し、2026年度に分譲を開始する計画。ただ合志市は土地取得が難航しており、遅れが生じる見込みだ。熊本空港周辺に関しても適地が見当たらないのが現状だ。

 TSMCは工場運営の効率化の観点から、台湾では工場を集積させる傾向にある。熊本県の幹部も第3工場の誘致に意欲を見せている。一方、菊陽町周辺では借地で飼料を生産する酪農家らが、農地転用のため地権者から土地の返還を求められるという問題も顕在化している。半導体生産に欠かせない水の保全に関する懸念も根強いものがある。第1、第2工場の建設決定を第3工場の呼び水にできるかは、地元の理解が欠かせないと言える。(田上一平)

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