家庭にとって“なくていいクルマ”でも「救わなければ」 国産名車を残す使命感 息子の一言で決断

81年式シルビア ハッチバックが注目を集めた【写真:ENCOUNT編集部】

はるな愛は114年前の名車に乗って大感激

恒例の交通安全イベント「第25回 高輪交通安全フェア 品川クラシックカーレビュー イン 港南」が7日、東京・JR品川駅港南口ふれあい広場で行われた。新型コロナウイルス禍の影響もあって、2019年以来、5年ぶりの開催。貴重なクラシックカー約40台が駆け付け、会場はレトロ感満載の極上空間に。クルマ愛好家や外国人観光客ら多くの人でにぎわった。

ダットサン・ブルーバードをはじめ、往年の名車ローレル、世界的にも人気のトヨタ2000GTも。渋い日産バイオレットに加えて、日本で現存唯一の“ポルシェパトカー”や、世界でも残り少ないツェンダップ・ヤヌス250の激レアカーの姿もあった。

関東近郊でのカーイベントではおなじみの日産スカイライン“GT-R軍団”も抜群の存在感を示した。ハワイから来日した男性は興奮気味。1972年式のスカイライン2000GT-Rをしげしげと見つめながら、「貴重なクルマばかりで、感激だよ。ハワイの人たちはみんなスカイラインが大好きなんだ」。スマホで撮りまくっていた。

クラシックカーに加えて、白バイ5台や警察車両が参加し、駅前を回る交通安全パレードも展開された。

品川駅港南商店会と警視庁高輪警察署が主催、全日本ダットサン会が運営を担った。タレントのはるな愛が一日署長を務め、交通安全イベントに参加。パレードでは、超が付くほど希少な1910年式のロールス・ロイス シルバーゴーストに乗り、「エンジン音も含めて味のある雰囲気で、すごい経験をさせてもらいました」と感激の様子だった。御田八幡神社による交通安全祈願も執り行われた。また、東海大付属高校音楽隊による迫力ある生演奏が披露され、聴衆が聞き入った。

全日本ダットサン会の佐々木徳治郎会長は「久しぶりにまたこうして多くの人たちが交流する機会が実現できて、うれしいです。安全運転で事故を起こさないだけでなく、被害に遭わないよう、少しでも悲惨な事故が減っていけばと思います」と語った。

「できれば新型シルビアを出してほしいですね」と熱望

会場にはいぶし銀のシルビアがオーラを放った。81年式の日産シルビア ハッチバック。黒のボディーカラーが印象的なKS110型だ。50代男性オーナーが愛車物語を聞かせてくれた。

20代で免許を取って最初に買ったのは同型の中古車だった。その後、S13シルビアに6年間乗り、レガシィ ツーリングワゴンなどもマイカーにした。2000年頃、街中で久々にシルビア ハッチバックを見かけ懐かしさを覚えた。それと同時に、「もう絶滅危惧種だな」と複雑な思いを抱いた。「シルビアを自分が救わなければ」という使命感に駆られた。

あちこちを探し、02年に現在の愛車を手に入れた。当時ファミリータイプとも言えるエルグランドに乗っており、家を建てたばかり。これまでクルマの趣味を理解してくれた妻に相談するにもためらいを感じた。「そもそも当時の状況でシルビアをわざわざ買う必要性がない。言わば“なくていいクルマ”です。妻からは自分で決めるようにと言われました。上の子が幼稚園だったのですが、『どう、買っちゃおうか?』と聞いたところ、『買っちゃう』と答えれてくれて、それで購入を決断しました」と振り返る。“家族会議”にドラマがあった。

それから20年以上乗っている。自分流にカスタムを施し、足回りを強化。パワーの強いエンジンに載せ替えた。エアコンとパワーステアリングも取り付けた。「角張ったデザインがかっこいい」とほれ込んだ思いは今も変わらない。

4年前、シルビアを盛り上げようと、歴代シルビアが集まるカーイベントを都内で開催。34台が集まり、カーオーナー同士の交流を深めた。「“縦のつながり”ができました」と実感を込める。

「買っちゃう」と“承諾”した息子はクルマ好きに育ち、自動車関係の仕事に就いている。なんと日産マーチでサーキットを走っていて、タイムアタックで好成績を残しているという。

シルビアに乗ったことで、「多くの人たちと出会うことができ、クルマを通した人の縁が広がりました」と笑顔を見せる。妻や家族の理解にも感謝しながら、これからも愛車を大事に乗っていく。それとともに、「シルビアはフェアレディZやスカイラインと比べて認知度が低いクルマです。でも、1965年に初代が登場した歴史あるクルマなんですよ。これからも魅力を伝えていきたいですし、できれば新型シルビアを出してほしいですね」。シルビア復活への熱い思いをにじませた。ENCOUNT編集部/クロスメディアチーム

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