「整いましたか」創業100年の老舗銭湯が新設備で生き残り策 苦境の中でも若者に人気

「地域に金山湯を残すにはどうしたらいいかを考えた」と語る中出さん(京都市中京区)

 京都市中京区で100年ほどの歴史を刻む老舗銭湯「金山湯(きんざんゆ)」に、銭湯としては全国でも珍しいというファン垂涎(すいぜん)の新鋭設備が整った。設置後、客数は2割増しと激増中。遠方からはるばる訪ねてくる人も少なくない。地域に根付いた銭湯がどんどん消える中、生き残りに向けて知恵を絞った取り組みとは-。

 「評判は上々。お客さんは2割増しで、若い人も増えています」。金山湯の中出雅外次(まさとし)さん(63)が笑顔を見せる。京都市内はもちろん、大阪や兵庫からも20~30代が続々と足を運ぶ。

 金山湯は1921年ごろに創業。レトロな雰囲気が魅力だ。

 客を引きつけているのは、2023年12月中旬に設けたフィンランド式のサウナ入浴法「セルフロウリュ」ができる設備だ。男性用サウナで楽しめる。

 熱したサウナストーンに、利用者自身の好きなタイミングで水をかけられる。香りがするアロマ水の持ち込みもOKだ。

 ひしゃくで水をかけると、一気に蒸気が広がり、体感温度が急上昇する。中出さんは「お客さんからは『勝負が速い』と言われる」と語る。限界に達するのが普通のサウナよりも速いという意味だ。

 水の量を好みで調節でき、蒸気量を加減できる。金山湯に通うサウナファンの意見をじっくり聞いた上で、導入を決めた。銭湯としては京都府内で初めての設置といい、全国的にも珍しいという。サウナファンの間で用いられ、心身がよい状態になる「整う」という言葉が好きな中出さんは「お客さんに『整いましたか』と声をかけている。評判は上々」と手応えを口にする。

 490円の入浴料のみで使えるのは京都ならでは。他府県ではサウナ使用に別料金を取るケースが多い。

 サウナは不特定多数が使うため、ロウリュをしたい人は周囲の了解を得てから行っている。マナーをきちんと守る人ばかりで、問題は起きていないという。

 市内では後継者難や経営者の高齢化、客数の減少を背景に、続々と銭湯が姿を消している。中出さんは「銭湯を金山湯がある壬生地域にどう残していくかを考え、セルフロウリュを入れた。公衆衛生、福祉や防災の視点からも銭湯の存在意義は大きいと考えている。銭湯に価値を付加して、喜んでもらうのが銭湯が生き残る道だ。京都の銭湯を活性化させたい」と意気込む。

 女性用サウナも改修した。セルフロウリュの設置はまだで、男性用の評判を踏まえながら、今後、導入の是非を検討していきたいという。

 営業は午後2時~午前1時。土曜定休。

金山湯の風呂
創業100年を超える金山湯

© 株式会社京都新聞社