マスターたちのスイング診断 VOL.2 ロリー・マキロイ【解説/目澤秀憲】

シェフラー、マキロイ、ラーム、ケプカ…マスターたちによる祭典がいよいよ始まる。オーガスタを攻略してグリーンジャケットに袖を通すのは誰か。マスターズ優勝をサポートした経験を持つ目澤秀憲コーチが、優勝候補たちの最新スイングを分析・解説する。第2回目は、世界ランキング2位のロリー・マキロイ。

タイガーが息子に「お手本」といったスイング

タイガーが息子のチャーリー君に「真似るなら僕よりもローリー(マキロイ)のスイングにしなさい」と言ったのは有名な話ですよね。でもタイガーがいうように、マキロイのスイングは、まさに僕らの世代(30代)が「ゴルフのスイングはこうしなさい」と教わってきた基本がすべて詰まったスイングといっても過言じゃありません。

アドレスは変に手元が下がったり、前傾がかがんだりもない。手の位置も高くていい意味で力が入って無さそうですし、この力感は真似したくても意外とできないもの。トップの位置もキレイでクロスすることなく、クラブの上げ方もいい位置に上がっています。切り返し以降も手が低いところから下りてきて、こんなに手が前に出ずにインパクトできるのも、他のプロからすればうらやましい限りだと思います。インパクト前にインパクトの形が作れているので、あとはボールポジションでドローかフェードかを打ち分けるだけ。

ほどよい前傾(左)、キレイなトップ(中)、手元が前に出ないインパクト(右)(撮影/田辺安啓(JJ))

体も変わらず強くて若い時からの捻転差も変わっていないし、インパクト後の跳ねるタイミングも完ぺき。まさに鍛えた体のフィジカルとスイングの技術を融合させた「アスレチックスイング」。タイガーが「お手本にしなさい」というのもうなずけます。

ことしに限って言えば、トップの形がさらに良くなりましたよね。左手首は今まで甲側に折れるのが強かったんですが、それが減りました。コテのような練習器具をつけて手首の矯正をするなど、マキロイなりに修正を図ってきたと聞きます。悪くなるとトップが深くなってクロスに入る傾向がありました。そうなるとクラブが寝て下りてきやすく、インパクトで下から入りやすくなってドローがキツくなりやすかった。今はその修正が上手くいっているのでしょうね。

マキロイはインタビューで「スイングを変えている」とよく言っています。ですが、見た目にはほぼ大きな変化はなく、実際は彼の中でそのトップの位置や手首のカタチを微調整しているだけ。ベースのスイングは何も変わっておらず、行き過ぎたものをニュートラルに戻しているわけです。変わらなくていい「いい部分」は決して変化させず、「過度な部分」をただす作業。戻れる場所があるからこそ、これだけ長い間第一線で戦うことができるんです。

「ロケーション負け」をしないのもマキロイの強み。ドローを打つならアドレスでちゃんと右を向かなければなりませんが、フェアウェイが狭くて緊張するようなホールでもちゃんと右を向けています。それはとても勇気のいること。マスターズはドローを打たなければならないホールが多いですから、ちゃんと右を向いてドローが打てている現在の状態は、とても仕上がりがいいといえるでしょう。

生涯グランドスラムに大手をかけているマキロイは、今週一番注目されると思います。その重圧をはねのけてグリーンジャケットに袖を通せるのか。注視していきたいと思います。(取材・構成/服部謙二郎)

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