柳美里さんとロバート・キャンベルさん、ウクライナ思い平和語る

ウクライナの平和について語る柳さん(右)とキャンベルさん

 福島県南相馬市小高区在住の作家柳美里さんと、日本文学研究者ロバート・キャンベルさんが6日、同市小高区の小劇場「Rain Theatre(レインシアター)」でトークイベントに臨んだ。キャンベルさんが日本語訳や紀行文の執筆を手がけた書籍「戦争語彙(ごい)集」を基に、ロシアによる侵略が続くウクライナの平和について考えた。

 キャンベルさんは昨年6月、ウクライナの首都キーウ(キエフ)や、多数の市民が虐殺されたブチャなどを訪れた。イベントは2人が書籍を朗読し、内容を紹介する形で進められた。

 キャンベルさんは、リビウ国立大の学生とのやりとりなどに言及し「ふわっとした平和を聞くと、彼らは『それと引き換えに何を渡さないといけないのか』と(尋ねる)。停戦が最善という日本の考え方と、彼らの平和は異なる。否定できないと感じた」と述べた。

 柳さんは、母が朝鮮戦争を経験したことに触れ「朝鮮半島は休戦状態で、私も家族もずっと問いの中にいる。長いトラウマの戦争のただ中を生きているという意味で、問いが響き合う空間で学生と語り合えれば」と思いを口にした。

 イベントは、小劇場に隣接し、柳さんが営むブックカフェ「フルハウス」の6周年を記念して開かれた。

 柳さんは「高校生が立ち寄って(JR小高駅の)電車を待つなど、居場所と思ってくださる人が多い。コロナの厳しい状況があっても、地元の常連客が増えてうれしい」と語った。

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