【日本ハム】〝22億円事件〟も快く柔軟に対応 新庄剛志監督のような指導者は見たことがない

新庄剛志監督の懐は深い

【球界こぼれ話】懐の深さはやはり別格か。日本ハム・新庄剛志監督(52)と話をしていると、こう痛感させられることがある。

先月31日のロッテ戦(ZOZOマリン)前もそうだった。ベンチ前での雑談中、通訳が話題になったことから指揮官に「あの話題」を尋ねてみた。ドジャース・大谷翔平の元通訳・水原一平氏による違法賭博問題だ。

新庄監督といえば過去に資産管理を任せていた知人に20億円以上を流用された苦い過去がある。やや事例は異なるものの、大谷と同様、信頼していた知人に裏切られた被害者の一人である。自身の金銭トラブルはすでにテレビ番組などで何度か告白しているとはいえ、最終的に20億円以上もの実害を受けた“事件”だ。普通なら蒸し返されたくはないはず。だが本人にその話を含め大谷の一件を聞くと嫌な顔ひとつせず「いやいや、いいのよ。でも俺の方が大谷君の何倍(の損害)? 俺、22億だからね。22億あると思って(銀行口座に)2000万円しかなかったら…どうします!?」と笑いながら即答した。

その後も当時の自身が受けた心の傷を赤裸々に明かし、最後には大谷に「人間3日で(いろいろ)忘れるから。大丈夫、大丈夫。大谷君の(被害を受けた)金額は年俸からしたら…ね」。さりげないエールも忘れなかった。

すでに解決済みのトラブルとはいえ、億単位の損害を受けた被害者がここまで自身のツラい過去を平然と語れるだろうか。しかも周囲が重い空気にならないよう常に笑いを交えながら場を和ませる。これまで20年以上の記者人生で何百人という監督やコーチを取材してきたが、新庄監督のようにどんな質問でも快く柔軟に対応できる指導者は見たことがない。

その一方で現役時代から野球に関しては一切の妥協を許さず、監督になった今も人知れず対戦相手のデータ収集や自軍選手の状態把握を日々入念に行う。もちろんそれを偉ぶることもない。

派手なパフォーマンスや外見で誤解されることもあるが、表では見せない一面を目の当たりにすると見方が一変する。それが新庄監督の魅力でもある。

ここ2年間は自らが矢面に立ち、批判覚悟でチームの底上げに尽力した。今年はそんな苦労や努力が報われるのか。寛容ながらも秘めた闘志を燃やす指揮官の逆襲。期待しながら見守っていきたい。

© 株式会社東京スポーツ新聞社