松林麗監督インタビュー 初メガホン映画「ブルーイマジン」が話題 性被害テーマにした想い

松林麗監督

これまで俳優として活動していた松林うらら(31)が、松林麗名義で初めて監督を務めた映画「ブルーイマジン」(アップリンク京都などで公開中)が話題になっている。同作は、駆け出しの俳優志望の女性が男性映画監督から性被害に遭うという物語だ。なぜこのような作品を作ったのか。その製作経緯や思いについて話を聞いた。

――同作は性暴力、DV、ハラスメントの被害に遭った女性がシェアハウスに集まり、勇気を振り絞って連帯する姿を描いている。製作の経緯は

松林 私が俳優としてキャリアを積み上げてきた中で、今まで見て経験したこと、女性の生きづらさをプロデュース目線で作ってみたいというのがあって、そこが軸になっています。もともと私も出演し、プロデュースを担当した映画「蒲田前奏曲」(2020年)でもハラスメント、DVをテーマに描いていて、その映画の監督4人からバトンを受け継ぎ、もっと#MeTooやハラスメントの問題を取り上げたいという流れがありました。

――監督も被害者の一人

松林 自分の経験も(映画に)昇華したかったのですが、蒲田前奏曲では消化不良だなと。次に作品を作るのであれば、もうちょっと踏み込みたいとなって。

――構想から約4年で、公開となった

松林 自分の経験に関しては、脚本を担当していただいた後藤美波さんに取材をしてもらって。後藤さんの想像の部分もあるし、さまざまな人にインタビューをして脚本を作り上げていきました。

――映画に昇華したかったのは、なぜ

松林 今、性犯罪で捕まっている人もいたり、SNSなどで(性被害を)告発している人もいますけど、それだけでは社会は変わらないなという思いもあったし、私自身が映画で表現していきたかったので。女性たちが連帯し、個だったものが複数でつながって声を上げるという方向に向かいたい。一つのエンタメとして、救いや希望を与えるような作品にしたかったんです。

――芸能界の性被害に関してさまざまなニュースが報じられている

松林 映画が完成したタイミングで、ちょうど旧ジャニーズ事務所の記者会見があって。現実とフィクションが重なりました。

――同作の終盤では、記者会見で被害者が加害者である映画監督を糾弾するシーンもある

松林 映画はフィクションですし、そこに面白みを演出として入れて。(現実では)加害者に被害者が立ち向かうなんて、絶対にできない。フィクションだからできる力があるんじゃないかなと。

――あの演出に至ったのは

松林(劇中に登場する加害者の)映画監督を拷問したり、川に投げたりとか…考えたりはしていました。復讐ってなんだろうって。暴力を受けた者として、暴力で返したくないという思いに最終的に至りまして。

――オランダの「第53回ロッテルダム映画祭」に出品。海外での反応は

松林 日本は観客の方の約9割が男性ですが、オランダでは男女比が同じくらい。現地では「こういった被害を受けたけど、あなたの映画に救われました」や「作ってくれてありがとう」と言われ、作ってよかったと思いました。

――現実で起きていることへの疑問もある

松林 メディアやSNSで告発している方々の救済というものもなくはないんだけど。告発しても消費されていくことが多いから、どうしたらいいのかなとも思っています。

――具体的には

松林 被害に遭った方の中には、精神障害やPTSD(心的外傷後ストレス障害)になり、実際に亡くなられている方もいらっしゃってかなり深刻な問題です。ただ、SNSで叩き合うことは、声を上げるということとちょっと違いますよね。

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