被災地への募金は「ふるさと納税」に該当。両方行った場合、控除額はどうなる?

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1月1日に発生した能登半島震災。4月1日時点で280億円超の義援金が集まっており、公表資料によると個人で寄附した方も多くいるようだ。
(https://www.pref.ishikawa.lg.jp/suitou/gienkinr0601.html)

被災地への寄附金は、税制上「寄附金控除」の対象となるが、同じ寄附金控除の対象としては「ふるさと納税」も認知度が高いだろう。実際、利用者数は年々増加傾向にある。

ふるさと納税は、所得や家族構成などで寄附金の上限額が異なるしくみとなっているが、「被災地へ寄附」と「ふるさと納税」の両方を行った場合、寄附金の上限額や控除に影響はないのだろうか? 檜垣昌幸税理士に聞いた。

●義援金は「ふるさと納税」のため上限額に注意

ーー被災地への寄附とふるさと納税を併用する場合、ふるさと納税の控除上限額にどのように影響するのでしょうか。

ふるさと納税も義援金等の寄附も、どちらも「寄附金控除」という制度を使用することに変わりがありません。義援金のうち、個人が被災地の地方公共団体に設置された災害対策本部に対して支払った義援金は、原則として「ふるさと納税」に該当します(※)。よって、ふるさと納税と義援金で控除上限額が増えるわけではありません。

ーー実質自己負担額はいくらくらいになるのでしょうか?

例として、<給与収入450万円・独身、ふるさと納税で上限額の52,000円を寄附(総務省「全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安」より算出)、被災地(災害対策本部)へ3万円募金>という条件でシミュレーションしてみましょう。

この場合、ふるさと納税と募金をした結果受けることができる寄附金控除により、所得税の減少額は「6,829円」、住民税の減少額は「47,895円」と節税額は合計「54,724円」で、実質自己負担額は「27,276円」となります。

ふるさと納税と募金の合計額「82,000円」からすると、差額の「27,276円」は完全な自己負担となりますのでご注意ください。

●「税額控除」を選べば自己負担額を抑えられる

一方で、たとえば学校やNPO法人などへの寄附においては、寄附する相手先によって「所得控除」と「税額控除」を選択できる場合があります。

この場合のそれぞれのシミュレーションは以下の通りです。

【所得控除で計算する場合】
所得税減少額:6,829円/住民税減少額:48,000円
節税額:54,829円/実質自己負担額:27,171円

【税額控除で計算する場合】
所得税減少額:17,294円/住民税減少額:45,000円
節税額:62,294円/実質自己負担額:19,706円

「税額控除」の場合、寄附額の最大40%が税金から控除されるため、所得税と住民税を合計した税率が40%を超えない場合(課税所得900万円未満)は、税額控除を選択した方が節税額が大きくなります。

ただし、ふるさと納税は特別な扱いがされるため、上限金額までは自己負担が2,000円だけで済みますが、それ以外の寄附は節税効果があるもののあくまでも“寄附”であるため、自己負担額は2,000円では収まりません。

ふるさと納税以外の寄附金は、「返礼品がもらえないだけでふるさと納税と同じ」と勘違いしてしまうと、実質自己負担額が大きくなってしまいます。

●寄附先によって寄附金控除の対象にならないことも

ーーその他にも、ふるさと納税と寄附金控除を併用する際の注意点があればお教えください。

ふるさと納税と寄附金控除を併用する際の主な注意点は以下の通りです。

・控除限度額の理解
前述のように、ふるさと納税とその他の寄附金控除(一般的な寄附金控除、政党等への寄附金控除など)は、控除限度額の計算方法が異なります。
これらの控除を併用する場合、各々の制度で設定された控除限度額を超えないように注意が必要です。

・寄附先の選定
寄附金控除を受けられるかどうかは、寄附をする相手によって異なります。
一般に、国や地方公共団体、または税制上の特定寄附金の受領団体に対する寄附は、寄附金控除の対象となります。しかし、すべてのNPO法人や公益財団法人等が寄附金控除の対象となるわけではありません。

事前に寄附先が寄附金控除の対象団体であるかどうかを確認することが重要です。また、所得税の控除対象であっても住民税の控除対象ではない場合もあります。

・書類の整備
ふるさと納税と一般的な寄附金控除を併用する場合、両方の寄附に対する受領証明書が必要になります。確定申告をする際には、これらの書類を一緒に提出する必要がありますので、紛失しないように保管しておくことが大切です。

・確定申告の必要性
ふるさと納税の控除を受けるためには原則として確定申告が必要です。一部のケースではワンストップ特例制度を利用して確定申告を省略できる場合がありますが、寄附金控除(ふるさと納税以外の寄附)を受ける場合は、確定申告が必須となります。

これらのポイントを踏まえ、具体的な計算や限度額の詳細については、税理士や専門家に相談することをお勧めします。また、ふるさと納税や寄附金控除に関する最新の情報は、国税庁のWebサイトなどで確認することができます。

※国税庁「義援金に関する税務上の取扱いFAQ」
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/saigai/h30/0018008-048/index.htm)

【取材協力税理士】
檜垣昌幸(ひがき まさゆき)税理士
2005年大原簿記専門学校を卒業後、経営コンサルティング会社へ就職。独立したのちに自動車販売会社での取締役着任を経て、税理士事務所に就職しサラリーマン大家さんの税務を多く担当。その後に独立し年商3000万未満のスモールビジネスに特化した事務所として活動している。
事務所名 : おまかせTAX 檜垣昌幸税理士事務所
事務所URL: https://omakasetax.co.jp/

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