2024年元旦、能登半島で最大震度7を観測する地震がありました。
その後、関東地方でも地震が多発。食料や水などを備蓄したり、災害時におけるトイレ等の必要性や、避難経路を再確認した人は大勢いるのではないでしょうか。
そして、万が一に備えて地震を擬似体験する人も増えています。
都内には、地震を疑似体験できる施設が3ヶ所(東京消防庁の本所防災館、池袋防災館、立川防災館)あります。
今回は、東京消防庁の本所防災館で地震を疑似体験してきました。
「本所防災館では、自然災害コースと自助共助コースの2つを体験してもらうことができます」と教えてくれたのは、本所防災館の広報担当、北村真二さんです。
前者はシアター、地震、煙、暴風雨、都市型水害の体験コース。
後者はシアター、地震、煙、消火、応急手当のコース。
共に所要時間は1時間45分です。
北村さん「全参加者に災害に関する映画を観てもらった後、グループごとに1人のインストラクターから説明を受けながら疑似体験をしていただきます」
その他にも、VR(バーチャルリアリティ)防災体験と救出救助体験ができます。
それぞれの所要時間は30分です。
筆者が訪れた2024年3月上旬は、家族連れやグループなど大勢の方が。そのなかに自然災害コースを申し込んだ千葉県市川市の子ども会(総勢50名)がいました。
来館を計画したのは昨年末でしたが、能登の地震もあり参加者が増えたそうです。
今回、子ども会の方と一緒に、自然災害を疑似体験させていただきました。
揺れや地響き、食器が割れる音で地震を疑似体験
まずは「震災体験コーナー」へ。体験室に入ったら、床に両手両足をついて身を守る姿勢をとります。
床が揺れるだけでなく、スクリーンに映し出された家屋や電信柱、タンスが揺れたり、食器が落下して割れる音が地響きとともに鳴り響きます。
地震が、揺れと音と映像で迫ってきました。
子どもは震度4、震度5弱・震度5強、震度6弱を体験。
大人は関東大震災や、2016年熊本地震の本震、2018年北海道胆振東部地震などを体験します。立つどころか、身を守ることもできないぐらい大地震でした。
怖くて声をはりあげる人も。「これはヤバい」「無理だ」「立てない!」という声が聞こえました。
2016年熊本地震の本震が起きたのは真夜中。疑似体験も暗い室内で行われました。寝ているときに大地震が起きたらどうすべきか、考えさせられる体験でした。
インストラクターの方から「地震が起きた際、怪我をしないことが重要」という説明がありました。
怪我をしないで助けてもらえれば生存率は100%。24時間、48時間だと生存率が少しずつ低下します。72時間を超えると著しく下がるため、72時間以内に救出しなければならないと言われているという話も。
「笛を携帯していると安心です」とインストラクター。家屋などが倒壊したとき、自分がいることを伝えるには笛が一番だそうです。
次に向かったのは「煙体験コーナー」。フードコートで火災が発生したという設定で、煙から避難する体験をします。
インストラクターから注意点がありました。緑色の誘導灯を確認しながら避難すること。膝をつかずにかがんで歩くこと。右手で壁を触り、熱くないかどうかを手探りで確認しつつ、避難することなどです。
なぜ膝をついてはいけないのでしょうか。
インストラクター「火災でガラスなどの破片が床に落ちているかもしれないから。消防隊員も膝をつかずに行動します」
火災で真っ暗になることもあるので、小さな懐中電灯を身に着けておくと安心だと教えてもらいました。
「キーホルダーの小型懐中電灯(百均で購入可能)を携帯しましょう。子どもはランドセルに付けておくと便利です」とインストラクター。
ホテルや旅館などに宿泊する場合は、非常口や誘導灯を確認しようという説明もありました。
完全防備で大型台風を疑似体験
台風時、漁港などで実況中継をしているニュースキャスターをTVで見ることがあります。
「暴風雨体験コーナー」では、台風時のニュースキャスター的な疑似体験ができます。
カバーをセットした長靴に履き替え、雨合羽を着て体験室に入室。
子どもは、1時間に30ミリの雨を体験。その後、瞬間風速10メートルの風が吹き荒れます。
大人は、1時間に50ミリの雨を体験します。
雨が止んだ後、夜の海辺の設定で瞬間風速30メートルの暴風におそわれます。
手すりにつかまっていないと立っていられないぐらいでした。
台風時、海岸線や河川に近づくことがいかに危険かを身を以て知ることができました。
水圧でドアが開かない怖さを体感
1階にある「都市型水害体験コーナー」では、水圧によるドアの重さを実感できます。
10センチまで浸水したドアを押し開けてみたり、20センチ、30センチまで浸水したドア開けに挑戦できます。
全国各地で、地下や半地下に浸水した例はたくさんあります。その際、どの程度の水圧がドアにかかるのか、子どもも大人も体験します。
同様に、浸水して停まってしまったクルマのドアを開ける水害体験もできます。
最後に自助共助コースで体験する「消火コーナー」を北村さんに案内してもらいました。
北村さん「正面のスクリーンに火災が発生。大声を出して近くにいる人に火災発生を伝達してから消火します」
消火器をセットし、火が付いている的に消火液(水)をかけます。
力がない人は、消火器を地べたに置いて消火します。
北村さん「火に近づきすぎると危険です。赤いラインの外側で消火し、火が小さくなってきたら近づき、最後まで消火にあたってください」
スクリーンに映る火災の映像は、屋外や屋内など5種類あります。
国内外から大勢の人が来館
北村さん「地震、火災、水害の疑似体験をすることで、災害の怖さを知ってもらいつつ、楽しみながら防災の知識や技術を学んでもらうための施設です」
昨年の来館者数は約9万2千人。東京消防庁の施設ですが、国内外からの来館者があるそうです。リピーターが多いのが防災館の特徴。
最後に、市川市の子ども会の母娘に感想をお聞きしました。
お母さんの感想「話だけでなく、実体験ができてよかったです。地震と暴風雨が勉強になりました。
煙体験コーナーでは子ども達を先に避難させたのですが、ドアが複数あり、なかには開かないドアもあって立ち往生。避難路を探しながら逃げることの重要性を知ることができたはずです。今回の失敗を今後に役立ててほしいと思いました」
女の子(小学4年生)の感想「地震があったとき、どうすればいいかを知ることができました。暴風雨で木が倒れることを体験できたし、怖かったです。
小さいときは火が怖いと思っていました。でも、火よりも煙のほうが怖いことが今日わかりました。またここに来てもっとたくさんのことを知りたいです」
ご家族やお友達と一緒に、東京消防庁の防災館に出かけませんか。
防災の必要性を知るきっかけになるはずです。
防災館
【本所防災館】東京都墨田区横川4-6-6
【池袋防災館】東京都豊島区西池袋2-37-8
【立川防災館】東京都立川市泉町1156-1
防災館によって体験できる内容や、項目によっても体験できる年齢が異なります。それぞれ公式サイトでご確認ください(要予約)。
※掲載情報は取材時点のもの。掲載後に体験内容等が変更になる場合があります。各施設の公式サイトで最新情報をご確認の上、おでかけください。
(ハピママ*/ 中島 茂信)