『虎に翼』寅子がよねに怒られた“理不尽”の背景 「魔女部!」と蔑まれ考える“法律とは”

寅子(伊藤沙莉)の振袖は母・はる(石田ゆり子)の愛で六法全書に化けた。『虎に翼』(NHK総合)第6話では、寅子が晴れて「明律大学女子部法科」に入学。新たな門出に弾む寅子の心は、同期・山田よね(土居志央梨)からの言葉で一気に曇ってしまう。

兄・直道(上川周作)の妻となった花江(森田望智)を含め、家族全員に見送られる寅子。「地獄へ行ってまいります!」という出発の挨拶とは裏腹に、入学式は希望に満ちていた。「女性に弁護士資格が認められる法改正はまもなくであり、君たちは婦人の社会進出という明るい未来そのもの」という学長の言葉に寅子は頬を緩ませる。式には新聞記者たちも駆けつけ、彼らがカメラを向ける中、雑誌にも特集されたことのある女子の憧れの的である華族令嬢の桜川涼子(桜井ユキ)が英語で堂々と代表挨拶を述べるなど、最初は緊張の面持ちだった生徒たちからも笑顔が溢れた。

寅子は式の後、自分を大学に誘ってくれた穂高(小林薫)と再会。一緒に取材を受ける。100点満点のコメントと心の中で自画自賛する寅子だが、気になるのは新聞記者・竹中(高橋努)の表情だ。前作の朝ドラ『ブギウギ』に登場した記者・鮫島(みのすけ)の例もあり、本当に誠実な記者なのか、つい疑いの目を向けてしまう。鮫島ほどのいやらしさはないが、取材対象である穂高や寅子に一切のリスペクトも感じられない竹中。2人のコメントが変に捻じ曲げられなければいいのだけれど……。

そんな不安とともに開けた寅子の学生生活に、さらなる波乱の予感が。女子部法科の一期生である久保田(小林涼子)と中山(安藤輪子)が校内を案内してくれる中、先輩の数が随分と少ないことが気になった寅子たち。聞くところによると一期生はもともと80人いたが、7人に減ってしまったらしい。その原因の一端となっている出来事を寅子たちは目の当たりにする。他の男子生徒たちが法服を着た久保田たちに「魔女部!」「嫁の貰い手がいなくなるぞ!」と心無い言葉を浴びせたのだ。

あまりに幼稚な嫌がらせに呆れる寅子だが、中山はどんどん涙目になり、ついには後輩たちの前で泣き出してしまう。というのも、中山は婚約者から「これ以上、法律を学び続けるなら別れる」と言われていたのだった。男子生徒たちも中山の婚約者も、結局言いたいことは同じ。寅子がお見合い相手から言われたように、そこには「女のくせに生意気だ」という女性に対する蔑みが隠れている。

これが現実だと言わんばかりの地獄を見せられ、言葉を失う二期生たち。寅子は自分が何とかしなければという使命感に駆られたのだろう。自己紹介も兼ねて歌を披露し始めるが、その気遣いが逆によねの怒りを買ってしまう。

「ヘラヘラしてうっとおしい。お前みたいなのがいるから女はいつまでも舐められるんだよ!」と凄まれ、思わず尻餅をつく寅子。最初は唖然としていたが、法律のことなんて何にもわかっていないと言われてカチンときた寅子は「法律とは私たちが守らない規則で……」と反論する。だが、最後まで言い終わる前に「法律を校則か何かと思ってんの?」と追求されて言葉を失ってしまった。

よねの言葉が頭から離れず、先輩たちの法廷劇にも集中できなかった寅子。法律とは? はて? そんな疑問でいっぱいの寅子にヒントを与えるのは、司法浪人生活2年目に突入した優三(仲野太賀)の「法律とは自分なりの解釈を得ていくもの」という言葉だ。よく「法学に正解はない」と言われ、条文の解釈も人によって異なる。学びに終わりはない。この第2週は、寅子がそんな法学の大前提を知る週となるのではないか。

最悪の出会いとなってしまった寅子とよねの関係性の変化も気になるところ。一見するとよねの寅子に対する振る舞いは理不尽極まりないが、彼女もこれまで女性であるという理由で散々理不尽な目に遭ってきたのではないだろうか。よねの表情や言葉の端々からは、そんな痛みがひしひしと伝わってくる。当時としては珍しいパンツスーツも、彼女にとっては男性に舐められないための鎧なのかもしれない。女性の社会進出を強く願う気持ちは寅子も同じだと気づけば、手を取り合うこともできる気がするが、果たして。
(文=苫とり子)

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