【J2「劇的」】清水、乾の絶妙すぎるワンタッチアシストで劇的勝利 攻撃陣の層の厚さが違いを生み首位奪取(1)

絶妙なアシストを決めた清水・MF乾貴士  撮影/中地拓也

■清水はアウェイで3連戦初勝利を目ざす

「超攻撃的」が、ドラマティックだ。

J2リーグ第9節が4月7日に一斉開催され、2位の清水エスパルスは5位のヴァンフォーレ甲府とのアウェイゲームに挑んだ。秋葉忠宏監督が昨シーズン同様に「超攻撃的」、「超アグレッシブ」の姿勢を掲げる清水は、ここまで5勝1分2敗だ。一方の甲府は4勝2分2敗である。

3連戦の3試合となった今節、清水はMFカルリーニョス・ジュニオが3試合ぶりに先発に復帰した。さらに、MF乾貴士、FW北川航也も3試合ぶりにメンバー入りしている。彼らがスタメンから外れた過去2試合は勝利を逃しているだけに、どのタイミングで攻撃のトライアングルが揃うのかが注目となった。

秋葉監督はカルリーニョス・ジュニオを1トップに配し、2列目右サイドにルーカス・ブラガ、トップ下にMF中村亮太朗、左サイドにMF矢島慎也を配した。カルリーニョス・ジュニオの1トップ起用は、6節のジェフユナイテッド千葉戦の後半途中で初めて使われたオプションだ。ブラジル人アタッカーは高さを強みとしないが、身体の強さを生かして足元でボールを収めることができる。地上戦なら十分に勝負できる。

甲府を攻略するためには、カルリーニョス・ジュニオがボールを収めたあとのアクションがポイントになる。彼からワンタッチでボールを受けたり、背後を走ったりする動きがほしいのだが、全体が連動していかないのだ。カルリーニョス・ジュニオのラストパスから矢島がペナルティエリア内でシュートする場面はあったが、前半はハイライトシーンがほぼないまま時間が過ぎていった。

■乾の絶妙アシストが決勝弾を生み出す

0対0で推移していくなかで、秋葉監督が61分に交代カードを切る。右SB吉田豊、ダブルボランチの一角のMF白崎凌兵を下げ、右SB北爪健吾と北川を投入する。

さらに67分、ルーカス・ブラガと矢島が退き、MF松崎快と乾がピッチに立つ。1トップの北川を頂点に2列目に松崎、乾、カルリーニョス・ジュニオが並び、中村がボランチに下がる。

北川が最前線で起点となり、乾とカルリーニョス・ジュニオがボールを落ち着かせることで、チーム全体の縦への推進力が強まる。2列目の選手が前を向いてボールを受けることにより、北爪と左SB山原怜音の攻撃への関わりもスムーズになっていく。80分にはカルリーニョス・ジュニオとMF西原源樹が交代し、サイドからの圧力をさらに強めた。

ただ、今シーズンホームで未勝利の甲府も、交代カードを切りながら攻撃のギアを上げていく。85分、清水は右ポスト直撃のシュートを浴びた。ここで先制されていたら、試合の結末は違ったものになっていただろう。

何とか失点を免れた清水は、90分にスコアを動かす。山原が右CKを蹴ると、相手DFにクリアされる。ファーサイドへ流れたボールを、乾がワンタッチでゴール前へ折り返す。これが絶妙だった。ライナー性のクロスを、CB住吉ジェラニレショーンがヘディングでねじ込んだ。住吉は水戸ホーリーホックに在籍していた21年以来のゴールだ。

最終盤にリードを奪った清水は、CBをあげてきた甲府のパワープレーを跳ね返し、終了のホイッスルを聞く。3試合ぶりの勝点3をつかんだ。

試合後のフラッシュインタビューに応じた秋葉監督は、「相手よりも最後の最後まで我慢強く戦う。最後しっかりとセットプレーの流れのなかから、ねじ伏せてみせる。非常にタフで頼もしい選手たちだなと思っています」と声を弾ませた。

前節まで首位のファジアーノ岡山が引分けたため、清水は今シーズン初めて首位に立った。主力選手が戻ってきたことで、勝点奪取のペースを上げていきたいところだ。

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