エリートのバティア 「マスターズ」初出場でもオーガスタに“帰る”

オーガスタへ最後の1枚の切符をつかんだアクシェイ・バティア(Brennan Asplen/Getty Images)

◇米国男子◇バレロテキサスオープン 最終日(7日)◇TPCサンアントニオ オークスコース(テキサス州)◇7438yd(パー72)

通算20アンダーでプレーオフにもつれ込んだ激戦は「マスターズ」初出場と、ツアー初勝利をかけたぶつかり合いだった。後続に9打差以上をつける2人旅を演じた「67」のアクシェイ・バティアと、バックナインで8バーディを記録するなど「63」をマークした未勝利のデニー・マッカーシー。軍配はオーガスタ行きを狙ったレフティに上がった。

バティアは昨年7月に「バラクーダ選手権」で初優勝。同大会は「全英オープン」と同週に開催された大会だったため、マスターズの出場権を手にできなかった。10代の頃から将来を嘱望され、米国のジュニア選抜の常連。同じ2001年生まれの久常涼が「ずっとエリート街道を走っていた感じ」だったと語る世代のトップ選手だ。

「僕は1回、2回くらいしか同じ試合に出ませんでしたけど、当時からめちゃくちゃうまくて有名でした。高校生のうちに世界アマチュアランキングでトップ10に入ったり。周囲の反対を押し切って17歳でプロになったんです。だから、彼がマスターズに出られないのが不思議なくらいだった」(久常)

その逸材は長らく、精神面での課題と戦いながら下部コーンフェリーツアーからはい上がり、昨年PGAツアーに進出。2勝目を狙った今大会は初日から単独トップを走った。

重圧のかかる展開で連日、左手首にはマジックでテーマを書き込んだ。3日目は「Race Your Race=自分のプレーに集中するんだ」、最終日は「W-T-W(Wire to Wire)=完全優勝」と記して強い気持ちでプレー。正規の最終18番(パー5)でマッカーシーに先にバーディを奪われた後、4mを流し込むバーディで逆転を許さなかった。

「なんてクレージーな一日だ」と相手の猛チャージに耐えたバティア。マスターズ行きを決め、「オーガスタナショナルに行くことは全ての子どもたちの夢だ。パトロン(ギャラリー)という形であれ、選手であれ、キャディであれ、何だっていい。“戻れること”が本当にうれしい」と喜びに浸った。

オーガスタナショナルGCには10年前、大会直前の日曜日に行われるジュニアイベント「ドライブ・チップ&パット」に参加(12、13歳の部で6位)。この催しの“卒業生”として初めてマスターズの本戦に出場する。ストーリーは完璧だ。(テキサス州サンアントニオ/桂川洋一)

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