【ダイエットの落とし穴】体重が停滞した女の末路

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「読めば痩せる!?」笑えるダイエットストーリー、第18話!


《第18話》「体重が停滞した女の末路」

“ピッ”

私を乗せた体重計が、いつもの音を鳴らす。

いやぁ順調だ。ほんと自分でも驚くほどすこぶる順調だ。
どれくらい順調かと言うと、桃鉄で99年間ずっとボンビーがつかずにプレイできたくらいすこぶる順調だ。

今日また最小値を更新して、10キロ痩せるまでこれであと4キロ。

私はルンルンで会社に行く準備を整え、ルンルンで家を出る。
家を出た時、実際に「ルンルンっ♪」と口に出してしまっていたのを、
たまたま出くわしたお隣さんに聞かれてしまい、

変な感じになった。

でも、ルンルンなので気にしな〜〜いっ♪

ルンルンで準備を整えたからなのか、気がつくといつもより15分も早く家を出ていた。

と、なれば……

私は散歩がてら、普段は使わない道を使って、ほんの少し遠回りをして駅まで向かった。
実はこれも、1週間ほど前から取り入れてるダイエット戦法の一つ。

今までも順調に、少しずつではあるが体重は落ちていた。
が、
“移動中に積極的に歩く戦法”を取り入れてからと言うものますます順調に体重が落ちている。

少し前に上司と行った「上司がとんでもないこと暴露しちゃった飲み会」(第16話第17話参照)で、有酸素運動の話が出てから、この“積極的に歩く戦法”を実践している。

説明しよう!

“移動中に積極的に歩く戦法”とは、
とにかく移動中に積極的に歩く戦法なのだ!!

……

うん。もうほんと、それ以上でもそれ以下でもないんすよ。

いやね最初は「ウォーキングとかやるかー」とも考えたんですけどね?

え、でも結局運動ってダルいじゃないですか?
極力やりたくないじゃないですか?

だから、日々の生活の中で極力歩くことにしたんです。

例えば、コンビニとかスーパーに行く時に一個遠い方に行くとか。
会社帰りに一駅遠くの駅で降りるとか。

別にまとめてウォーキングとかで時間取るんじゃなくて、
何かのついでになるべく多く歩くって感じです。

あ、だからって別に早歩きするわけでもなく、
腕ガシガシ動かしながら歩くわけでもなく。
ただただフツーーーに、フツーーの速度で、歩くだけ。

目標は朝起きてから寝るまでで、一万歩!(あくまで目標。下回る日もある!)

えー? 10000歩って大変じゃなーい? ってお思いのそこのあなた!
確かに一気にウォーキングの時間をとって、まとめて10000歩は結構しんどい!

でも1日の累計なら、
1日の中でちょこちょこ、ちょこっとだけ遠回りするとかを心がければ意外と
「あ、もう10000歩いってんじゃん」
なんて結構よくある。

ポイントは、運動ではなく、あくまで移動として歩数を稼ぐこと。

一気にやるとダルいししんどいしやる気なくなるから、
ちょこちょこ小まめに歩いて移動を心がけている。

そんな“移動中に積極的に歩く戦法”を取り入れてから、
ダイエットは順調オブ順調。
もうルンルンオブルンルンっ♪

が!!

ルンルンで会社に着くなり、怒涛の仕事が待ち受けていて、ルンルンなんてアホみたいなことは言ってられなくなった。いや誰がアホやねん。いや、自分で言ったんだったわ。いや、心の中でアホみたいなこと言ってる場合じゃなかったわ。仕事せい私。

後輩・伊藤ちゃんが仕事でミスり、通常業務に加えてその対応をせねばならず、この日は昼もなしに仕事をすることになった。
まあ普段何かとダイエット知識を教えてもらっている伊藤ちゃんのためだ。
やってやろうじゃないの!

てなわけで、バタバタと仕事をこなし、なんだかんだとしているうちに帰宅したのは23時を回った頃だった。
バタバタしていたこともあり、スマホを見ると本日も無事1万歩を達成。

寝る前に何か食べても良いけど……
と、スマホでいつも使っているレコーディングアプリを立ち上げる。
カロリー的にはまだ余裕が結構ある。
けど……

ま、もう寝ちゃうか!
寝れそうだし!
1ヶ月2キロ達成したいし!

最近割とこう言うことがある。
上司との謎飲みの後、1ヶ月2キロにしようと思ってから、レコーディング的にまだ余裕があっても食べずに寝れそうなら寝てしまう。寝ちゃったらお腹空いてても割と平気だし。
そして、それと合わせて“移動中に積極的に歩く戦法”もやっているので、最近また一段と順調に体重が落ちている。

「明日も体重最小値でたらいいな〜」

と、私はルンルンで、この日は何も食べずに眠りについた。

で、翌朝──。

“ピッ”

体重は、微増していた。

んー、昨日の夜食べなかったのに。
結構こういうことあるよなー。マジなぞ。

いや、便の出方とか、水分の取り方とかでこう言うことが起こるのはもう勉強済み。

たまにむくみで結構グンと体重が増えたりしてる日もあるけど、むくみが取れれば体重は元に戻る。
伊藤ちゃんが前に「体重はずっと減り続けるなんてことは絶対なくて、増えたり減ったりしながらジグザグに減っていくものですよ〜」と教えてくれた。

私はまさにその通りに、ジグザグに増えたり減ったりしながら、6キロ落ちた。

だから今日の微増にも、もはや変に動じたりはしない。

「まあ良いけど」

と呟き、あくまで凹むことなく、
私はいつも通りのテンションで会社に行く準備を整え、
いつも通りのテンションで家を出た。

そこで、またたまたまお隣さんに出くわして、

いつも通りなのになぜかまた変な感じになった。

でも……
昨日忙しかったせいだろうか。
いつも通りのテンションとはいえ、なんだかやたらと体の疲れを感じる……。

でもな。1万歩歩かないとだしな。

と、今日も歩数を稼ぐべく、10分で行けるところを13分かけて、
3分もいつもより遠回りをするという、ものすごーーい遠回りをして、会社に向かう。
そして会社に着くなり、伊藤ちゃんが私のところに近づいてきた。

「昨日はすみませんでした!」

気持ちいいくらい綺麗に詫びを入れてくる。
普段口の悪い彼女だが、こう言うところは素直で可愛い。
伊藤ちゃんは続けて私に

「昨日私のせいで結構残業になっちゃったって聞いて」
「ううん。大丈夫大丈夫〜」
「めっちゃ遅くまでやってたって聞いたので……。ちゃんとご飯とか食べれました……?」

まあ、そこはダイエットを月1キロペースから2キロペースにしたかったから、
ちょうどよかったとも言える。そんなことを伊藤ちゃんに伝えると、

「……」

少し黙り込み、思案顔を浮かべる伊藤ちゃん。

ん? なに?

「先輩。私に初めて相談してきた頃から比べたら結構痩せましたよね? 5、6キロくらいですか?」

さすがエスパー伊藤ちゃん。ピッタリ当ててくるじゃないか。
私は伊藤ちゃんに、今まで月大体1キロずつくらい順調に落ちていたけど、
それを2キロにしたいと思っていることと、
正直、今がダイエットを始めてから一番やる気があるんじゃないかってくらいにはやる気だ!
と言うこと。
そして最近有酸素運動も取り入れちゃってるなんてことを伊藤ちゃんに話した。

が!!

「このままだと先輩、痩せなくなりますよ?」

……伊藤ちゃんが……真顔で……めっちゃ怖いこと言ってきた。

いやいやいや。そんな訳ないじゃ〜〜ん。

だって、今までで一番やる気なんだよ?
食事だってちゃんとメンテナンスカロリー下回ってるし。なんなら今までより結構大幅に下回ってるし。
しかも1日一万歩歩く有酸素運動だって取り入れたんだよ?
軽く調べたけど、有酸素運動って一番楽に痩せられるって言うじゃん。
てか実際、昨日だって最小値更新したし。
まあ確かに今日は最小値から微増はしたけど……いや、でもそんなのよくあることだし。

「まあ……信じるか信じないかは、先輩次第です」

……こーわ。
急に都市伝説みたいなこと言ってくるじゃん。こーわ。

そしてそれから2週間――

私の体重は、
エスパー伊藤ちゃんの予言通り、ピタッと止まった。

ここ2週間最小値を更新できていない。

いやいやいや。
なんで??

ちゃんとやってるんだよ? 食事の管理も、有酸素も、週に一回ジムだって行ってる。
全部ちゃんとやってる。
なんなら今までで一番ちゃんとやってるんじゃないかってくらいにちゃんとやってる!!
なのに……!! なのに……!!

と、そこに女上司が近づいてくる。

あー今の精神状態で新しい仕事振られるとかマジ勘弁してほしいんだけど……
と、思っていると女上司が私にこっそり耳打ちしてくる。

「聞いて聞いて! あなたが教えてくれた方法実践して、もう1キロも減ったのっ♪」

……

あー

……

もう、ほんと……

私は2週間ぶりに、心の中で上司を、

……

蹴ろうと思ったけど、やめた。
テンションあがんないし。なんかだるいから。

あー、キッツ……。

10キロ痩せるまで、あと4キロ──

“知識”を身につけた未来のわたしから一言二言

出ました停滞期。

ほんと、ダイエットって止まるんですよね……。

10キロ以上のダイエットを敢行しようとした時、どうしても1、2回は停滞期が来る。
いや、1、2回で済めばいい方だ……。

だからこそ、
ダイエットは止まるもの。

と思っておいた方がいい。

あ、ここで間違えてはいけないのが、有酸素運動が痩せないと言うわけではない。と言うこと。

むしろ、“移動中に積極的に歩く戦法”は、
ダイエットの手段としては間違いなくいい方法です!

手軽に取り入れられるし、「運動するぞ!」って思わなくても、ちょっと遠回りするとかで手軽にやれるし。

1万歩の消費カロリーは、その人の体重や歩行速度にもよりますが
おおよそ300kcal!

なんとこれ、以前紹介した、ランニング30分の消費カロリー約210kcal(体重50キロ、時速8キロで走った場合)より全然多いんです!(第2話参照)

え、じゃあ走るより全然楽じゃね? って思いますよね?
そうなんですよ!
走るより楽ですっ!!(私は!!)

ランニングとかするくらいだったら、買い物帰りとかにちょっと遠回りする方選びません?
私はそっちの方が断然楽でした。

そんなダイエットに効果的な、“移動中に積極的に歩く戦法”を取り入れたのになぜ停滞したのか。

今回の失敗の原因は、取り入れたタイミングと、カロリー摂取の仕方にあります。

以前、こんなダイエットあるあるをご紹介しました。
不真面目にやってた時の方が痩せてたのに、
結果が出てきて、真面目にやり出すと体重が停滞する。

そうなんです。
ダイエットは真面目にやる気出してやったら、止まるものなんです。

それはなぜか。
やる気を出すと、食事を制限しすぎることがよくあるから、です!

人間は、低カロリーの状態がずっと続くと、
体がそのカロリーでもやりくりできるようにしようとするため、基礎代謝を下げようとします。

これも以前お話ししましたが、人間の消費エネルギー(消費カロリー)の割合は、

・何もしなくても、生きているだけで代謝される“基礎代謝”ってやつが7割。 ・動くことによっての“生活活動代謝”が2割。 ・食事を消化することによって起こる“食事誘発性熱代謝”が1割。

で、大体構成されています。(第12話参照)

ダイエットは

消費カロリー > 摂取カロリー

になっている必要があるわけですが、
消費カロリーの7割という大部分を占める基礎代謝が落ちてしまうと……

まあ答えは明白。

つまり、基礎代謝が落ちれば、体重は停滞するんです。

基礎代謝が落ちてるサインになるのが、ダイエット中に
「なんか体疲れてるな」だったり「なんか体だるい」だったり。
基礎代謝が落ちると疲れやだるさを感じやすいです。
あと、体温も下がったりします。

そんな停滞の状態を打破しようと、さらにやる気を出して、摂取カロリーを
「もっと減らさないと!!」
と思うと、体はさらに基礎代謝を落とし、また体重は止まり、さらに体は疲れます。

その後、どうなるか。
しんどくて「もうやめた!」ってなる人も出てくるでしょう。

さぁここでやめたらどうなるか。
行き着き先は……
最悪の末路です。

基礎代謝が落ちた状態で、ダイエットをやめて普通に食べたとします。
例え食べ過ぎなくても、その状態でカロリーを摂ると、

普通の時よりも基礎代謝が低く、カロリーを消費できない状態だから、
余ったカロリーはガッツリ脂肪についていく。

いわゆる太りやすい体ってやつが、これです。

そして気がつけばダイエットの前よりも脂肪がついている……。
なんて悲劇を招くことになるわけで。

でも、そんな悲劇を回避する方法があるんです。

ここで、少しダイエットに詳しい方なら
「ああ、チートデイでしょ?」
と、思った方もいらっしゃるのでは。

甘いですっ!!!

チートデイは、適切なタイミングで、適切に行わないと、
これまた

とんでもない悲劇を招く ことになりかねません!!

どんな悲劇か……
は、また次回に!!

(第19話につづく……2024年4月22日公開予定)

作者/【体脂肪率3%の脚本家】の保木本真也
『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日)『事件』(WOWOW)など
ベストボディジャパン2023松山大会 モデルジャパン部門ミドルクラス グランプリ

イラスト/藍沢みお

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