「再生に向けた体制の見直しについて」「今後の事業の方向性について」・・・2024年4月8日、ダイハツ工業株式会社とトヨタ自動車株式会社はそれぞれに、ふたつのリリースを発表しました。軽自動車をコアとしたダイハツらしい「もっといいクルマづくり」を進めながら、トヨタのバックアップを受けた小型車開発にも意欲を見せます。まだ見えきれていないところは確かにあるけれど、まずは貴重な一歩にエールを贈りましょう。
道路運送車両法基準への適合はすでに確認が進む
日銀が4月2日に発表した企業短期経済観測調査(通称、短観)によれば、製造業の中でも大企業の業況を判断する指数が、2024年3月は前回調査(2023年12月)から、四半期ぶりに悪化したそうです。その理由として考えられているのが、品質不正問題の発覚による自動車生産の減少でした。
とくにダイハツ工業の不正問題は、素材関連や供給網に関わる業態の指数悪化にもつながりました。改めて、自動車という基幹産業が日本の経済に及ぼす影響の大きさが、窺われます。
すでに販売されたクルマの、とくに安全要件に関する審査・検証はもちろん喫緊の課題として、取り組みが進んでいます。すでにダイハツ、トヨタ、スバルブランドの主要な現行販売車種だけでなく、過去に販売したものについても軽乗用車、小型乗用車、商用車について国土交通省の検証が進み、道路運送車両法の基準に適合していることが順次公表されています。
一方で、ダイハツの「これから」に向けた再生の方向性がどうなるのか・・・2024年4月8日(月)の記者会見では、体制の見直しと今後の事業の方向性が発表されました。出席したのは、3月1日付で就任した代表取締役社長 井上雅宏氏と、代表取締役副社長の星加宏昌氏と桑田正規氏です。
軽自動車を中心としたモビリティカンパニーへの転身
そこではこれからの方向性、再発防止に向けた取り組みなどについて、体制見直しを含めた変革の概容が語られました。総じてのスタンスとしては「軽自動車を中心に据えたモビリティカンパニー」に転換、改めて「国民車」としての軽自動車の魅力・可能性を拡張していくことになるようです。
小型車に関しては、トヨタが開発から認証までの責任を担います。ダイハツはその委託を受ける開発を担う、とのこと。今後の切り替えモデルから順次、体制が変わっていくことになります。同時に、開発プロセスにおける取り組みについても、日程的な見直しや、異常時の対応について適正な対応を行うための体制づくりが進んでいます。
これまで開発における各過程で進行の遅れが積み重なり、それがしわ寄せとなった結果、最終段階での検査に割く時間がとれなくなり、見切り発車的に対応せざるを得なかったことが不正につながる原因のひとつとなりました。そのため今後は、それぞれの段階でより厳格なスケジュール管理を徹底することで、日程見直しをスムーズにできるようにするなど、さまざまな意味で「適正な間」がとられることになりそうです。
記者会見の席上、ダイハツで働き続けてきた「たき上げ」である星加副社長は、ダイハツのアイデンティティと言うべき「良品廉価」への取り組みには、こだわり続けていく、と語りました。
リソース管理も含めたトヨタの協力は、今後も不可欠。同時に、ダイハツならではのクルマ作りにおける唯一無二のノウハウが今後も盛り込まれていくことは間違いなさそうです。