澤田空海理、古川本舗とのツーマン・ライヴの夢叶う

澤田空海理が主催するツーマン・ライヴ〈手 vol.1〉が4月5日、東京・渋谷PLEASURE PLEASUREで開催されました。

ライヴ・タイトルにvol.1とあるように、このツーマン・ライヴは今後シリーズ化する予定。記念すべき初回にあたるこの日は、澤田が敬愛するシンガー・ソングライター“古川本舗”をゲストに招きました。

[ライヴ・レポート]
まずは、アコースティックギターを携えた古川本舗が登場。夕焼け色の照明に包まれた古川の爪弾くアルペジオから、1曲目の「ordinaries」が始まった。吸った息をただ吐いただけのように自然な、しかし外の世界には安易に染まらないこの歌声の凛とした存在感は何だろうか。「夜」の空気をまとった古川の歌に、客席にいる一人ひとりが声を上げず、音も立てずに聴き入っている。観客にとっては、歌と自分が一対一になれるような贅沢な時間であり、自分が過去に置いてきたものに想いを巡らせられる貴重な時間だ。

対バンに呼ばれる機会はあまりないという古川。「今日はわたくし前座です。こういうことを言うと、やつはすごく嫌がるんだけど(笑)」という発言から読み取れたたのは、澤田との飾らない関係性だ。MCでは、澤田のことを「アーティストとしてまっすぐで、すごくいいやつ」と称しつつ、「今日呼んでもらって、気恥ずかしいながらも嬉しいです。改めて澤田くん、ありがとう。そして来てくださった皆様もありがとうございます」と語った。

古川はその後、4月24日に配信リリースする新曲「三分半 feat. mm.」や未配信曲も披露。ライブ終盤では「緊張しつつも楽しかった」と振り返り、「今年は社会性を身につけたい」「人と一緒にどんどんライブをしていきたい」と展望を述べたあと、澤田や観客へ再び感謝を伝えた。そして「ベイクドパンケイクス」で鮮烈な印象を残して終了。

澤田空海理のステージは、SE代わりの朗読音声からスタート。しばらくして登場した澤田は、ステージセットのベンチに腰掛け、アコースティックギターを鳴らしながら「可笑しい」を歌い始めた。澤田の楽曲には主人公の心の声や実際に発した声、思考の足跡や感情の移り変わりが詞になっているものが多い。そしてライブだと、呟くように歌ったり、声を思いきり張ったりといったボーカルの振れ幅によって、それが表現される。観客は、曲の主人公の心情に自分を重ねながら、あるいは重ならない分の距離を内省の種に変えながら、音楽に浸っていたことだろう。

「またねがあれば」「薄荷飴」と春の曲を続けて披露したあとのMCでは、古川や来場者、この日のライブをともに作ったスタッフに向けて、「本当にありがとうございます。夢が一個叶ったような気がしています」と伝えた。自分が一番楽しむつもりでいるからMCでは好きなことを喋ろうと、事前に内容を考えてこなかったとのこと。観客へ語りかける時の声色がやわらかかったこと、また、古川について語るときの声色が明るかったことが印象的だった。

その後は、ライブの前々日に配信リリースした新曲「作曲」をピアノアレンジで披露。

さらに、古川本舗の楽曲「スカート」「東京日和」を前者はギター、後者はキーボードの弾き語りでカバーするなど、この日ならではの特別な場面が続いた。ライブの終わりが近づくなか、「僕はみんなに悲しんで帰ってほしいんです。思い出すこといろいろとあるだろうし。そういうトリガーになりたいと思います」と観客に伝えた澤田。ラスト2曲、「振り返って」「遺書」で拍手もせずに聴き入っていた観客の姿を見るに、この日披露された楽曲の一つひとつは聴く人の心に強く残ったはずだ。深い余韻とともに、ライブは幕を閉じたのだった。

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