知床沖の観光船沈没事故からまもなく2年、地元では小型観光船業者が廃業を決めました。知床を取材すると、いまも地域全体にその影響を色濃く残している現実が浮かび上がってきました。
苦渋の決断でした。
「ドルフィン」運行会社 菅原浩也社長)
「同業者の事故さえなければまだまだ続けたかったけど・・・」。
知床の小型観光船「ドルフィン」。廃業を決断した運航会社の菅原浩也社長は6日、片付けのため事務所を訪れていました。
「ドルフィン」運行会社 菅原浩也社長)
「5月くらいに壊すみたいだから、建物も」。
知床の絶景を間近に感じられる小型観光船。2005年に知床が世界遺産に登録されると人気を呼び、1シーズンの売り上げは6000万円に上る年もありました。おととし4月、「知床遊覧船」のKAZU1が沈没。安全への信頼は揺らぎ、「ドルフィン」も客足が遠のきました。売り上げも最盛期の1割ほどに。
Q.もう知床に来ることはなさそうですか?
「ドルフィン」運行会社 菅原浩也社長)
「「もう来ないだろうね」
事故からまもなく2年。その暗い影は地域全体に落ちたままです。
知床かに乃家 竹ヶ原忠さん)
「僕の考えでは事故前(に比べて)コロナもあったけれど今の段階は、10あったら3までしか戻ってません」
この飲食店では事故前は地元の客と観光客が半々でしたが、いまではほとんどが地元客だといいます。
知床かに乃家 竹ヶ原忠さん)
「観光船というのは本当にものすごい人数なんですよ。その数がどこかに散るんじゃなくて、そのお客様たちがいなくなっちゃうんです」。
知床を訪れる大きな目的となっていた観光船。宿泊業界にとっても厳しさは増すばかりです。
民宿いしやま 伊藤憲子さん)
「お客様も船のこともあるからやっぱり遠のいていると思う。今まではこんなことなかった」。
Q事故から2年経って、記憶は?
民宿いしやま 伊藤憲子さん)
「忘れるわけない。今でも全然。地元の人は忘れちゃいけないと思います」。
「ドルフィン」運行会社 菅原浩也社長)
「よし、これでいいとするか」
20年にわたり船を走らせてきた「ドルフィン」。あの事故さえなければ…。
「ドルフィン」運行会社 菅原浩也社長)
「(お客さんが)船から降りるときにありがとございましたって言ってくれる。こんな商売はほかにあまりないんじゃないかなと思った。すごく幸せな仕事だなと」。
Q社長にとって知床ってどうでした?
「ドルフィン」運行会社 菅原浩也社長)
「人生の中で幸せな場所だった。よかった。人生の後半本当に楽しかった」。