公共政策で提言、中国へ姿勢厳しく JPモルガンCEOの株主書簡

Nupur Anand

[ニューヨーク 8日 ロイター] - 米銀大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は8日、株主への年次書簡で、「全ての人々に対する自由と正義」を呼び起こす米国の統率力と経済力を称賛した。

経済力とともに、軍事力やウクライナへの支援の重要性を強調。今年の書簡では、公共政策への提言が昨年よりも多く、全体の約4分の1を占めた。

「莫大な資源を持つ地球上で最も繁栄した国である米国も、その資源を今後の複雑で困難な課題に集中させる必要がある」と指摘。

国内問題として賃金格差の拡大を挙げ、「アメリカン・ドリームのほころび」が生じ、一部の人が取り残されたと感じる一方で裕福になった人もいるとし、教育の改善と低所得層の税額控除の拡大を提言した。

外交政策では、より多くの貿易協定に調印すべきと主張。中国に対しては厳しい姿勢を取るべきとしながらも、関与は続ける必要があるとの見解を示した。

米規制当局が提案した銀行資本規制の厳格化には改めて反対を表明。規制強化は市場の透明性を低下させ、融資コストを高くし消費者を苦しめる可能性があるとし、よりシンプルな規則、銀行と規制当局のより良い協力関係を提唱した。

金融機関とフィンテック企業、民間クレジット会社との競争が激化する中、合併承認を増やすよう求め、「銀行は、合併や買収を含め、適切と判断した戦略を個別に追求することが許されるべきだ」とした。JPモルガンは昨年、経営破綻した地銀の一つ、ファースト・リパブリックを買収した。

ダイモン氏は、インフレが市場が予想する以上に続く可能性があり、金利は高止まりするとの見方を維持した。

「昨年の地銀の経営不安など、不穏な情勢にもかかわらず、米国経済は堅調を維持し、消費者は支出をし市場はソフトランディング(軟着陸)を予想している」と指摘した。

一方で、潜在的な混乱要因として、米政府支出、量的引き締め、ウクライナと中東での戦争を挙げ、「これらの重要かつある種前例のない力があるため、われわれは慎重な姿勢を崩していない」と述べた。

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