シャバソン&ケルゴヴィッチ、テニスコーツとともに渋谷・WWWの都市型アンビエント・イベントに出演

カナダ・ヴァンクーバー在住のシンガー、ニコラス・ケルゴヴィッチと、トロント在住のマルチ・プレイヤー、ジョセフ・シャバソンによるアンビエント・デュオ、シャバソン&ケルゴヴィッチ(Shabason & Krgovich)が、4月3日に日本に到着。テニスコーツとのジョイント・ツアーで、4月5日長野・松本を皮切りに、全国5ヵ所を巡業中です。4月7日の神戸公演、4月12日の東京公演は完売と好評を博す中、ツアー本編に先駆けて、4月4日、東京・渋谷WWWにて開催された都市型アンビエント・イベント〈Balearic Park〉に出演。テニスコーツをフィーチャーした編成で全11曲を披露しました。

この日、共演アクトは、夏目知幸によるソロ名義“Summer Eye”、メロウでエキゾなサウンドを醸成させる“VIDEOTAPEMUSIC”、そしてDJとしてAkie。草木のオブジェが飾られたステージにパラソルをさし、独特のアシッド感でくるんだラテンやボッサの弾き語りを披露したSummer Eye、80年代半ばの高知県から日系人が多く住むワイキキ・ビーチまで、ノスタルジックな映像・語りに連動したサウンドで、観客をエキゾティックな時間旅行に誘ったVIDEOTAPEMUSIC、ダブやモンド・ミュージック、アシッドフォークまでを交え凉しげな空気で会場を満たしたAkieと、三者三様のバレアリック・サウンドが、会場をゆるくほぐしながら陶酔させる中、シャバソン&ケルゴヴィッチはトリで出演しました。

ライヴは、ジョセフ・シャバソンによるサックスの独奏「Long Swim」で幕開け。同曲はシャバソンの2018年のソロ・アルバム『Aytche』の収録曲で、自分の内面へとゆっくりと泳ぎだしていくような名演に、場内は一気に豊かで静謐な空間に。

それまでのエキゾなサウンドでほのかに高揚していた場内が、心地よく鎮静化されたところで、ケルゴヴィッチ、テニスコーツのさやと植野隆司がステージに登場。4人で最初に演奏したのは、クリス・ハリスとのトリオ名義で発表した2020年作『Philadelphia』より「Osouji」。シャバソンはフルートに持ち替え爽やかな音色を聴かせ、ケルゴヴィッチのつぶやくような歌声とさやの透き通った声との重なりが、会場を魅了しました。続いて演奏された「Bruce」は、M. Sageことマシュー・セイジを加えたトリオ演奏での新作『Shabason, Krgovich, Sage』の収録曲。「Osouji」とともに、彼らが吉村弘、ブルー・ナイルなどから影響を受けたことが伺える楽曲です。

彼らの作品の中でも最もポップな2022年作『At Scaramouche』より「CHILDHOOD MCDONALD'S」を披露し会場を温めたところで、ニコラス・ケルゴヴィッチがとても小さな声で「コンバンワ」と観客に挨拶。MCすらアンビエントなささやき声に、静けさに満ちた会場からはクスクスと笑いが漏れました。

続いて新作『Shabason, Krgovich, Sage』より「Old Man Song」を。この日、最もさやの歌唱が際立った演奏の一つで、その澄みきった歌声は耳福。少しづつテンポを落としていくような、ケルゴヴィッチとの掛け合いは、眠りに落ちる寸前のような心地よさでした。

そして、「I Don’t See The Moon」「Gloria」「Bridget」「I’m Dancing」と、『Philadelphia』、『At Scaramouche』、『Shabason, Krgovich, Sage』から満遍なくセレクトされた楽曲が続き、今回のライヴではもっともポップな「I AM SO HAPPY WITH MY LITTLE DOG」へ。アルバム『At Scaramouche』でも、まるで犬のなき声のように弾んだギターソロとフルートが印象的な楽曲ですが、ライヴでは植野によるさらに“元気”なギターソロを披露。これぞライヴの醍醐味と思わせる場面でした。ラストは、ケルゴヴィッチより「アンコールはやりません(笑い)」と一言あってから『Philadelphia』より「Open Beauty」を披露。濃密な静けさで過剰を満たした彼らの来日公演第一夜のステージは幕を閉じました。

シャバソン&ケルゴヴィッチのツアーは残すところ4月10日(水) 京都「UrBANGUILD」と4月12日(木)東京「7th FLOOR」公演のみ。うち、東京公演は完売となっています。学生は、証明書提示で500円引。ツアー詳細は7e.p.のツアー特設サイトをご確認ください。

写真:三田村亮(Ryo Mitamura)

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