トランプ氏、中絶巡り方針転換 全米で一律の禁止支持せず

Doina Chiacu Nathan Layne

[ワシントン 8日 ロイター] - 米大統領選で共和党の候補指名が確定したトランプ前大統領は8日、人工妊娠中絶の規制の是非は各州が決めるべきだとの見解を表明した。全米で一律に禁じることは支持しない立場を示した。11月の大統領選で無党派層の支持を失いかねないことを踏まえ、より穏健な姿勢を示した。

トランプ氏はかつて妊娠後15週以降の中絶を全米で禁止することへの支持を示唆していたが、政治的配慮を優先して方針を転換した。

自身の交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」へ投稿した動画で「(選挙に)勝たねばならない」と指摘した。

人工妊娠中絶を規制するかどうかは「各州が投票か立法、あるいはおそらくその両方によって決定することになる」として州の決定が国の法規でなければならないとの見方を示した。

強姦や近親相姦による妊娠や、母体の生命を守るために必要な場合には例外にすべきだとの考えを改めて示した。

米国では2022年に連邦最高裁が中絶の権利を認めた1973年の判断を覆し、主に共和党が優勢な州が中絶を禁止したり厳しく規制した。最高裁の決定は有権者の反発を招き、22年の中間選挙では民主党が善戦し、昨年行われた一部の州選挙でも民主党は勝利した。

3月に実施したロイター/イプソスの世論調査によると、米国民の57%が中絶はほとんどの場合、もしくは全ての場合において合法であるべきだと考えている。

バイデン大統領はシカゴで開かれた資金調達イベントで、今回の動画は中絶問題がトランプ氏の選挙運動にとって大きな問題であることを示していると指摘。「トランプは女性の力について何も分かっていない。すぐに分かるだろう」と述べた。

反中絶団体「スーザン・B・アンソニー・プロライフ・アメリカ」のマージョリー・ダネンフェルサー代表は、州によっては中絶へのアクセス拡大を許すことになるとして、トランプ氏の方針転換に深く失望していると述べた。

一方、共和党の政治コンサルタント、ジャネット・ホフマン氏はトランプ氏について、「予備選挙が終わったこの段階で全米の中絶一律禁止を提案しても多くの激戦州で有権者の支持を失うだけで、得るものは何もない」と説明した。

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