『366日』10年越しに動き出す明日香と遥斗の恋 幸福の絶頂から一転して衝撃の展開に

〈それでもいい それでもいいと思える恋だった〉

そのワンフレーズを耳にするだけで、誰かを切に思っていた日々が鮮やかに蘇る。多くの人の青春時代に寄り添ったHYの名曲から着想を得たドラマ『366日』(フジテレビ系)が幕を開けた。第1話では、高校時代から止まっていた明日香(広瀬アリス)と遥斗(眞栄田郷敦)の恋が10年越しに動き出す。まるで最終回のような幸福の絶頂から、急転直下の出来事が2人を襲った。

東京の音楽教室で受付として働く明日香はある日、友人の莉子(長濱ねる)から廃校が決まった母校・龍ヶ崎高校で同窓会が行われることを知らされる。「遥斗は来れないって」。その名前を聞いた瞬間、明日香の心にちくっとした痛みとともに高校の頃の思い出が蘇ってくる。

高校2年生の夏、吹奏楽部に所属していた明日香は高校野球県大会の応援スタンドでバッターボックスに立つ遥斗を応援していた。龍ヶ崎高校の野球部は遥斗のさよならホームランで見事勝利。球場に歓声が響く中、遥斗はスタンドに向かってVサインを掲げる。いつも明るく太陽のような存在だった遥斗に明日香は密かに想いを寄せていたが、本人に伝えることはできなかった。

大人になっても燻っていた明日香の恋心は、来ないはずだった遥斗が同窓会に現れたことで再燃する。高校の頃と同じように、遥斗は気づいたらみんなの輪の中心にいた。来月から東京勤務になったという遥斗と明日香は連絡先を交換し、勇気を振り絞ってメッセージを送るが、返事は待てども待てども来ないまま。そんな中、同級生・鮫島(佐藤景瑚)が劇団員を務める舞台を見に行った明日香は遥斗と偶然再会。気まずさを感じながらも公演後に遥斗と飲みに行き、近況を語り合う。

実家のお好み屋を継ぐことを夢見て、外食チェーンを展開する企業で働く遥斗。明日香の“忘れられない人”は10年前と変わらず輝いていた。対して、明日香は音楽教室の講師になることは叶わず、受付として働いている。期待しなければ、傷つくこともない。すっかり願う前から諦める癖がついてしまった明日香にとって、遥斗だけではなく、同窓会で再会した同級生たちは学生の頃からの夢を追いかけている人もいれば、今の仕事を頑張っている人もいたり、はたまた結婚して子どもがいたりと状況は様々だが、全員眩しく思えた。

自分は果たして、このままでいいのだろうか。30歳の“壁”を前にした明日香の心に「自分には期待してもいいんじゃない?明日の自分は今日よりいいかもって」という遥斗の言葉がすっと染み込んでくる。

明日もきっと明るい日になる。昔も今も、そう信じさせてくれる遥斗の存在に背中を押され、明日香はずっと伝えられなかった思いを伝える。卒業式の日、明日香は遥斗に告白しようとしていたが、遥斗が他の女の子から花束を受け取る場面を目撃し、口をつぐんでしまった。けれど、それは別の同級生に渡してほしいと頼まれただけで誤解だったことがわかる。遥斗が思わず「バーカ」と言ってしまうくらい、その場で確かめれば良かっただけの話。だけど、あの時の明日香には本当のことを知るのが怖くて追及なんてできなかった。それは明日香だけじゃない。遥斗もまた、同級生に自分たちの関係をからかわれて思わず強めに否定してしまった明日香の本当の気持ちを確かめることができなかった。

「俺たち、これから始めてみない?」

そんな遥斗の言葉をきっかけに、2人のやり直しの恋が始まる。10年間の空白を埋めるように朝まで語り合って、より一層互いを好きになった明日香と遥斗は「明日もその先もずっと一緒に」なんて学生同士の恋愛みたいなやりとりを交わした。だが、2人が"ずっと”と願った未来の1日目、遥斗が子どもをかばって橋から転落するという悲劇が起こる。

思えば、HYの「366日」は、もういない誰かを想って歌った楽曲だ。物語も明日香が一人、桜の木の下で物思いに耽る2028年からスタートしている。明日香と遥斗の恋が再び始まったのは2023年。その5年間に何が起きるのか。明日香の未来に遥斗はいるのか。初回からグッと視聴者を惹きつける衝撃の展開だった。
(文=苫とり子)

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