隆起の海岸に新道路 輪島・千枚田周辺に整備

千枚田の東側で進む新たな道路の整備工事=輪島市野田町

  ●国交省復興事務所、GWから供用

 能登半島地震で寸断された能登外浦の国道249号について、国土交通省能登復興事務所は8日、輪島市千枚田周辺を通る同路線の海側に道路を新設し、5月のゴールデンウイーク(GW)中に供用を開始する方針を固めた。地震で隆起した海側の地盤を盛り土で補強し、崩れた道路を迂回(うかい)する異例の手法で整備する。大規模崩落が発生した輪島―珠洲の沿岸で車両の行き来が可能になるのは初めて。9日で地震発生からちょうど100日、インフラ復旧が加速してきた。

 外浦沿岸の国道249号では、輪島市の千枚田周辺と大川浜、珠洲市の逢坂トンネル付近の3カ所が大きく崩落し、車での往来が不可能となった。地滑りの危険性が高いことから従来の道路を復旧するのは難しく、能登復興事務所が隆起した海側の地盤を活用する工法を検討していた。

 計画によると、千枚田の東側に延長約800メートルの道路を新設する。このうち海側約430メートル区間は幅約6メートルの2車線とし、両側に高さ約3メートルの土のうを積んで崩落や波の影響を防ぐ。残る約370メートルについては既存の道路の一部を生かす。

 同事務所は大型連休後半となる5月上旬の往来再開を目指しており、天候次第で前倒しする可能性もある。供用開始後、当面の通行は緊急車両や地元住民に限る。

 千枚田周辺は、輪島市中心部から国名勝「白米(しろよね)千枚田」、道の駅「千枚田ポケットパーク」まで車で行き来できるが、それより東側には進めない状況が続いていた。

 千枚田の農家は崩落箇所より東に自宅のある人が多く、地震後、なりわいを失って市外へ避難した人もいる。道路が供用されれば自宅と千枚田を行き来できるようになるため、避難者の帰郷にもつながるとみられる。

 千枚田を管理する「白米千枚田愛耕会」メンバーの堂下政弘さん(70)=輪島市名舟町=は現在、避難先の金沢から千枚田に足を運ぶ。堂下さんは新道の整備について「農作業に合わせて自宅の様子を見に行くことができる」と歓迎した。

 同じく金沢で避難生活を送る田谷政広さん(72)=同市尊利地(そりじ)町=は千米田東側の旧南志見(なじみ)小で整備される仮設住宅への入居を希望し「仮設で生活できれば千枚田の作業にも参加しやすくなる」と話した。

 国道249号では地震後、輪島-珠洲間の231カ所で被害が確認され、国が権限代行を適用し、石川県に代わって復旧工事に取り組む。

© 株式会社北國新聞社