「デジタル時代の恐竜学」福井県立大学研究所の第一人者が解説 河部壮一郎准教授が初の著書

初の著書「デジタル時代の恐竜学」を出版した河部壮一郎准教授=福井新聞社

 福井県立大学恐竜学研究所の河部壮一郎准教授(38)が初の著書となる新書「デジタル時代の恐竜学」を4月5日に出版した。コンピューター断層撮影(CT)や3Dプリント技術を駆使し外観では分かりづらい化石の構造を明らかにする第一人者が、最新の恐竜研究の面白さを紹介している。

 大学院時代から15年に及ぶ研究成果をまとめた。9章立てで、第1、2章は福井県勝山市で発見された獣脚類「フクイベナートル」の全身化石をCTスキャンした研究について説明。3Dプリンターで脳や感覚器官の形状も再現し「嗅覚と聴覚に優れ俊敏に動いたはず」と推察した。

 第3章では、イギリスの博物館を訪れ全長7メートルの肉食恐竜「ネオベナートル」の化石を撮影、帰国後に3Dプリンターで骨格を組み上げ、福井県立恐竜博物館(勝山市)で展示したプロジェクトを紹介。イギリスの施設側も詳細なデジタルデータを得られるメリットがあり「館同士の交流を深めるきっかけにもなった」と意義を振り返っている。

 大型スキャナーの導入などデジタル化にかかるコスト面にも言及。デジタルを含む資料は「全人類共有の財産」とし、組織の垣根を超えた資金確保の重要性を訴えている。

⇒ティラノサウルス科の下あご化石、国内で初の発見 福井県立恐竜博物館など調査

 北陸新幹線県内開業によって恐竜ブランドへの関心が一層高まることを見越し、出版社側から執筆依頼があったという。河部准教授は、来春開設する県立大恐竜学部(仮称)に触れ「最新の恐竜研究にぜひ親しんでほしい」と話している。

 集英社インターナショナルから発行、224ページ。税込み990円。

© 株式会社福井新聞社