118年ぶりに里帰り 「東京出身」の山車と人形 神幸祭巡行に華添える 群馬・下仁田町

修復作業を進める仲町地区の有志

 明治後期に東京都台東区から群馬県下仁田町の仲町地区に渡った山車と人形が、5月26日に開かれる石浜神社(東京都荒川区)の神幸祭で巡行する。同神社鎮座1300年に合わせた記念事業で、みこし渡御に華を添える。118年ぶりの“里帰り”に向けて、地元有志がプロジェクトを立ち上げ、準備を進めている。

 「ここまで上がれば、なんとかなりそう」―。今月7日、町内の倉庫で15人ほどが山車を囲み、山車人形「楠木正成」を昇降させるための装置作りに汗を流していた。山車の修復は昨年秋に始まり、年明けからは有志が隔週日曜に作業に取り組んでいる。劣化が激しく、巡行するには骨組みを交換したり、塗装を塗り替えたりといった整備が必要だという。

 同地区によると、山車と人形は江戸末期~明治初期ごろ製作された。日露戦争の戦勝祝いや東京の山車文化衰退などを背景に、1906年に旧橋場2丁目(現橋場1丁目)から譲渡され、60年ごろまで活躍。町内の祭りに山車が根付くきっかけとなった。その後は同町本宿地区が所持したが、老朽化や人口減に伴い、過去10年以上使用されていなかった。

 里帰り企画は2年前、石浜神社の関係者から仲町地区に、例大祭への協力依頼があったことから持ち上がった。当初は山車人形のみ祭りで展示する予定だったが、山車本体も解体運搬して巡行することが決まった。引き手は同地区が担い、おはやしも披露する予定だという。

 同神社の奉賛団体「神明会」の前野祐人会長(61)=台東区=は「仲町の熱意に押され、自分たちも準備が進んでいる。1300年の一ページを共に飾れるのが感慨深い」と話す。

 当日は同地区を中心に40人以上が現地に駆け付ける。祭りを機に、都市部との交流がより進むことも期待されており、プロジェクトのリーダーの荻野匡司さん(60)は「他の地区からも協力があり、予想以上に盛り上がっている。ぜひ成功させたい」と意気込む。

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