短頭種専門医からフレンチブルドッグの健康について イリノイ大学の研究者が注意喚起

アメリカ人気犬種1位となったフレンチブルの健康を懸念する人々

フレンチブルドッグは世界中で高い人気を保っている犬種です。先ごろアメリカン・ケネルクラブが発表した2023年度のランキングでも、フレンチブルドッグはアメリカで最も多く登録されている純血種の犬でした。

しかし、オランダでのマズルの短すぎる犬の繁殖の禁止や、フレンチブルドッグの盗難や強盗の増加、スタンダードから外れた毛色の犬の増加、乱繁殖の結果の犬の健康状態の悪化など、この犬種をめぐる問題は尽きない状態です。

このような状態を受けて、アメリカのイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の研究者が科学系サイトに、ブルドッグの健康について寄稿をしています。同校には獣医臨床医学の教授で、短頭種の犬と猫の治療の専門家であるハイディ・フィリップス博士がいます。

日本でフレンチブルドッグなどの短頭種と暮らしている人、これから家族に迎えたいと考えている人にも、ぜひ知っておいていただきたいことですのでご紹介します。

フレンチブルドッグや短頭種が抱えている苦しみ

フレンチブルドッグはAKCの2023年人気犬種のトップですが、その人気は2010年代に急上昇しました。2006年から2016年の10年間でアメリカでのフレンチブルドッグの登録数は、476%も増加したといいます。

短頭種の犬や猫は、その特徴である平たい顔のせいで、非常に狭い鼻孔、鼻腔と鼻腔内の組織の肥大、過剰に大きい舌、狭い気管、軟口蓋の肥厚などのすべてが組み合わさって、呼吸が著しく困難になっています。呼吸困難はいびき、運動や暑さへの不耐性、無気力、さらには悪性腫瘍の原因ともなります。

前述のフィリップス博士は、これらの健康障害を持つ犬や猫を外科手術で治療しています。博士が手術を行なう患者の約95%はフレンチブルドッグだといいます。

短頭種の犬の呼吸を助けるための手術は、閉塞した鼻腔にレーザーを使って空気の通り道を開く内視鏡手術ですが、この手術ができる獣医師はフィリップス博士を含めて世界で3人しかいないのだそうです。

他の方法としては、鼻孔を大きくしたり軟口蓋の厚みや長さを減らすといったものがあります。手術は犬の生活の質と健康を大きく改善することができますが、これは犬種全体にとっての根本的な解決ではありません。

手術などしなくても、正常に息ができるだけのマズルを持つ健康な犬や猫だけを繁殖に用いて、生まれつき障害のある動物を作り出さないことが重要です。

単に息が苦しいだけではない深刻な健康障害

極端に平たい顔の犬や猫が作り出されるのは、そのような特徴を「かわいい」と感じて購入する人がいるからです。この循環を断ち切るためには、極端な短頭が動物にどのような負担を強いているのかを知る必要があります。

短頭種の犬や猫は、狭く塞がっている上気道から空気を取り込もうとしますが、この時に陰圧(内部の圧力が外部より小さくなっている状態)の状態を作り出し、咽頭のポケット状の組織の内壁を裏返してしまい、この裏返しになったポケットがさらに空気の流れを妨げます。

短頭種の犬は首と心臓の付け根にある酸素と圧力のセンサーにガンが発症することが多いのですが、これは呼吸が苦しくなることによる圧力の増加に、慢性的に晒されているからだと考えられます。

この圧力の増加は、食道裂孔ヘルニアや逆流性胃炎といった問題を引き起こすこともあるといいます。

肺に十分に空気を取り込むことができないため肺の高血圧、血液が動脈を通るのに時間がかかるため右心不全になることもあります。

生きるための基本である呼吸がうまくできないということは、体のあらゆる部分に悪い影響が出てしまうのだと多くの人に知っていただきたいと思います。

短頭種の犬のいびきや運動嫌いは決して「この犬種には普通のこと」ではなく、重大な健康障害につながっているのだと認識してほしいと、フィリップス博士は訴えています。

まとめ

アメリカでのフレンチブルドッグ人気犬種1位の発表を受けて、アメリカの短頭種のスペシャリストが注意喚起を訴えたことをご紹介しました。

一般の飼い主が、繁殖業者のやり方を変えることは簡単ではありません。しかしスタンダードを無視した犬を購入しない、繁殖の前にきちんと健康診断をしている良質なブリーダーを選ぶ、極端な容姿が作り出す弊害をよく知ることは、悪質な業者に流れる資金を断ち苦しむ動物を減らすことの第一歩です。

《参考URL》
https://www.nbcnewyork.com/news/national-international/french-bulldogs-remain-the-most-popular-dog-breed-in-the-us/5242609/

https://phys.org/news/2024-03-veterinary-surgeon-flat-pets-respiratory.html

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