『刑事7人』など出演の白洲迅「いろいろな声を受け止める機会になった」伝説の少年漫画ミュージカル

白洲迅 撮影/冨田望

第22回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストをきっかけに、2011年に、舞台『ミュージカル・テニスの王子様2ndシーズン』でデビューした白洲迅。’13年にはテレビドラマ『押忍!!ふんどし部!』(テレビ神奈川ほか)で初主演を飾るなど、その後も、映像、舞台を問わずに活躍し、近年では『刑事7人』(テレビ朝日系)の野々村拓海役でも知られる。デビュー以来、進化し続ける白洲さんのTHE CHANGEとは――。【第1回/全4回】

『テニスの王子様』への出演が大きな転機に

「これは片付けたほうがいいですよね」

席に着こうとしていた白洲さんが、写真撮影もあると聞いて、机の上のペットボトルが映りこまないように、自らスタッフさんの元へ持っていった。戻って来ると、『THE CHANGE』のアイコンである砂時計を手にして「この砂が全部落ちるまでに、質問に答えないといけないですか?」と冗談を言って和ませる。自然な配慮と気遣いに、白洲さんの人柄が表れている。

――砂時計は人生のTHE CHANGEの瞬間の象徴として持ってきました。白洲さんにとっての“人生の転機”について教えてください。

「間違いなく、ミュージカル『テニスの王子様』への出演です」

2.5次元舞台の先駆けであり、地位を一気に引き上げたミュージカル『テニスの王子様』(通称・テニミュ)は同名の少年漫画を基に、’03年にスタート。キャストを変えながら4thシーズンまで続く人気作であり、白洲さんは2ndシーズンのキャストとして、’11年からliveを含めて’14年まで、氷帝学園に所属する選手の鳳長太郎を演じた。氷帝のチームメイトには志尊淳や赤澤燈らがいる。

「デビュー作が『テニミュ』じゃなかったら、僕は役者を続けていなかったかもなと思います。長い期間、同じ役を演じ続けた作品でしたし、その分キャスト・スタッフと濃い時間を過ごせたので、初舞台で慣れないこともたくさんありましたが、楽しい思い出もたくさんあります。最初のお仕事が、1日や数日で終わるようなドラマの現場からのスタートだったら、もしかすると役者を辞めてしまっていたかもしれません」

「人前に立つことは一番苦手としていました」

――白洲さんが芸能界に入ったきっかけは、周りから言われて受けたジュノン・スーパーボーイ・コンテストですね。もともと俳優をやりたかったとか、子ども時代に映画やドラマにすごく感動してこの世界に、といった入り方ではなかったのでしょうか。

「そうですね。正直に言うと、俳優という仕事や何かの作品に憧れてこの世界に入ったわけではないですし、そもそも人前に立つことは一番苦手としていました。だから『テニスの王子様』じゃなかったら、“やっぱり無理だ”と辞めていたと思うし、辞められたと思うんです。でも『テニスの王子様』では、トータル2年以上の期間をかけて、役者としてやっていこうという気持ちを、自分の中でちょっとずつ積み上げていけたのだと思います」

――ミュージカル『テニスの王子様』は人気作なので、DVDが出ていたり、定期的に配信で見られたりもします。振り返って見ることはありますか?

「自分の作品ですか? あのときの自分をってことですよね? 見られないです。無理です。思ったこともなかったです。でも……。いま無理だと言いましたが、やっぱり“ちょっと見てみてもいいかな”とも感じました。部活動のように、かなり濃密な、大切な時間だったのは間違いないですし、芝居を始めたての自分を見たら、どんな気持ちになるんだろうって。単純な好奇心はありますね」

SNSの𠮟咤激励もバネに

――当時の仲間たちとは、いまも交流はあるのでしょうか。

「なかなかないんですけどね。連絡を取り合うメンバーも何人かいますし、気にかけてますよ。特にダブルスでの僕の相棒だったこうちゃん(桑野晃輔)とは、“ご飯に行こう”とか、やりとりしています。なかなか実現はできていないのですが。『テニミュ』は自分にとってすごく重要な作品だし、本当にゼロからのスタートでした。こうちゃんはすでにお仕事も結構されていて経験豊富だったので、当時からいろいろなことを教えてもらって、助けてもらいました」

白洲迅 撮影/冨田望

――観客の目の前で芝居をする、“舞台”というエンターテインメントだったことも、「芝居をやっていこう」と気持ちを育てる助けになりましたか?

「お客さんに応援してもらったのは、大きかったと思います。『テニスの王子様』は、いわゆる2.5次元舞台の走りですが、その魅力のひとつは、僕らの成長を含めて応援していただけるコンテンツということもあると思います。だから登竜門と言っていただいたりもする。観客の存在は大きいですね。応援だけじゃなく、いろいろな声を受け止める機会にもなりました」

――いろいろな声というのは?

「言うべきことじゃないかもしれないけれど、だいたいがSNSですが、叱咤激励を含めて、いろいろな人からさまざまな声が飛んできました。そういったことに関しても、走りだったかもしれません。それだけみなさんのキャラクターへの愛が強い作品だったから。でも、受け入れなきゃいけないものもあれば、しっかりと変わらない自分を持たなきゃいけないこともある。そうした声を受ける経験も、いま思えば、そのときからできてよかったのかなと思います」

デビュー作から年数をまたいで同じ役柄に向き合い、「濃密な、大切な時間」を育んでいった白洲さん。人前に立つことが苦手だったという青年が、デビューから13年。舞台に、映像作品にと活躍している。

白洲迅(しらす・じん)
1992年11月1日生まれ、東京都出身。’11年、舞台『ミュージカル テニスの王子様』の鳳長太郎役でデビュー。’13年には『押忍!!ふんどし部!』(テレビ神奈川ほか)にてドラマ初主演。ドラマ、映画、舞台と活躍している。主な出演作にドラマ『ごめんね青春!』(TBS系)、『刑事7人』(テレビ朝日系)シリーズ、『僕はまだ君を愛さないことができる』(フジテレビ)、『リコカツ』(TBS系)、大河ドラマ『どうする家康』(NHK)、『君が心をくれたから』(フジテレビ系)、映画『HiGH&LOW THE WORST』(2019年)『向田理髪店』(2022)など。’24年5月公演の吉田鋼太郎演出、彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.1『ハムレット』でホレーシオを演じる。

ヘアメイク :松田陵(Y’s C)
スタイリスト:持田洋輔
ジャケット¥187,000・Tシャツ¥17,600・パンツ¥52,800/コーチ/コーチ・カスタマーサービス・ジャパン(0121-556-936)靴¥35,200/アルフレッド・バニスター/アルフレッド・バニスター ルミネエスト新宿店(03-6380-0310)

© 株式会社双葉社