「経営運営のゆとりは保育の質にかかわる」76年ぶりの配置基準見直し 現場の多忙な1日 理想の人数は【ともにはぐくむ】(2)

新年度を迎え、子どもを保育園に通わせ始めた方もいると思います。その保育園で、実に76年ぶりに変わったことがあります。

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保育士1人がみる子どもの数を定めた「配置基準」。4、5歳児は、保育士1人に30人でしたが、2024年4月から「25人」に改善されました。一見、手厚くなったように感じますが、現場では不満の声もくすぶります。保育の現場で何が起きているのでしょうか。

「おはようございます」

静岡県焼津市のたかくさ保育園です。0歳から5歳児まで、約100人の子どもたちが通っています。

「各クラス登園確認をします」

この園では30人近い保育士がインカムを使って、緊急時に備えています。

午前中は、遊びの時間。4歳児18人に保育士は2人、5歳児24人に2人と、国の基準よりも多く配置しています。

昼ごはんの準備が始まりました。この園には、卵アレルギーの子どもがいます。他の子どもたちの食事と混ざらないよう分けて調理し、配膳の前には、複数の職員がチェックをします。

お昼寝の時間。保育士は、保護者との連絡ノートに園の様子を記入します。

現在、焼津市ではすべての民間保育園で配置基準を上回る保育士を雇用していますが、その理由について全国保育士会の会長を務める村松幹子さんに聞きました。

<たかくさ保育園 村松幹子園長>
「アレルギーのガイドラインもそうだし、睡眠のガイドラインとかも、いろんなガイドラインが今出ていますよね。いろんな形の保育が導入されてきているので、それをやはり実現していくことが求められているからじゃないかなと」

76年ぶりに見直された4、5歳児の配置基準。保育士1人がみる園児が30人から、25人に改善されましたが理想の配置基準を現場で聞いてみると。

<保育士>
「一人一人の課題を、一人一人ちゃんと見つけてあげて、今できないことをできるようにするための援助をやっぱりしたいと考えた時に、このぐらいの人数なら本当に丁寧にみれるかなと思います」

<保育士>
「(4、5歳児は)どうしても自分の力以上のことに挑戦してみたいとか身体を動かす運動量が増えてくるので。見守る目はすごく必要になってくる。25対1では少し難しい面もあるかなと」

保育士が子どもと向きあう時間を少しでも増やす取り組みが全国的に活発になっています。

静岡市の西久保こども園では、業務の一部をデジタル化しています。

<保育士>
「これは一年間で配布したお便りになります。保育士が一つ一つ手で折って園児たちのかばんの中に折ってしまう作業が今まではありました」

1回の作業は10分程度でも積み重ねなると、保育士にとっては膨大な時間を費やすことに。そこで、園からのお便りを保護者に一斉送信できるアプリを導入しました。

<保育士>
「ボタン一つで配信できるように変わってきました。印刷の手間も、紙、インクのお金も、随分削減されたのかなと思います」

<全国保育士会 村松幹子会長>
「子どもの幸せは保育士の幸せ。保育士の幸せも子どもの幸せで、子どもの幸せは保護者の幸せ。いわゆる経営運営のゆとりというのは、やっぱり保育の質にかかわってきますよね」

<伊豆田有希記者>
配置基準が改善されたと言っても、もともと新基準を上回る保育士を配置している園が多く、では人件費をどう捻出してきたかというと園内で一時保育施設を運営して収入を得るなど「園の自助努力」でやりくりしてきたのが現状です。見直しがされても、現場が求める数と配置基準はまだまだかけ離れています。保育の質を高めるための模索が続きます。

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