交通事故遺族が見守り 茨城町の交差点 中学生に安全呼びかけ

中学生の登校を見守る小松崎朱里さん(手前)と中村正弘さん(奥)親子=8日朝、茨城町上石崎

茨城県茨城町で15年前に起きた交通事故で妹を亡くした遺族女性が交通安全協会のボランティアとなり、通学路で見守り活動を始めた。春の全国交通安全運動期間(~15日)の8日朝には、父親と同町内の交差点で立哨活動。「少しでも事故を減らしたい」との思いを胸に、中学生たちの登校を見守った。

この女性は同県水戸市の小松崎朱里さん(25)。この日は午前7時過ぎから、父親の中村正弘さん(59)と一緒に同町上石崎の県道交差点で街頭に立った。2人とも水戸地区交通安全協会茨城支部ボランティアに所属。同県交通安全協会によると、小松崎さんは県内ボランティアでは最年少という。

事故は2009年10月27日朝、同町の自宅近くで起きた。3姉妹の末っ子で、小学1年の凪沙さん=当時(6)=が自転車で登校中、大型トラックにはねられ亡くなった。

次姉に当たる小松崎さんは事故当時、凪沙さんと同じ班で登校中。大きく鳴り響くブレーキ音で振り向くと、直前まで元気な姿を見せていた凪沙さんがぐったりと倒れていた。「当たり前の日常がこんな一瞬で変わってしまうのか」。事故が起きた日のことは今も忘れられない。

ボランティアへの関心が高まったのは、運転免許を取得し、自らハンドルを握ってからだ。運転中に自転車が飛び出してきて、ひやりとした経験もあり、「車と自転車、双方が注意しないと事故が起きる」と痛感した。

「事故を減らすためにできることは」。そう考えた時、事故後から同支部ボランティアを長年続ける父親の姿が脳裏に浮かんだ。その背中を追うように23年秋、「交通安全に貢献できる一番身近な存在」と入会を決めた。

この日は新学期の初日。立哨活動のこつを教わりながら約30分間、自転車通学する地元中学生たちに「おはよう」「いってらっしゃい」と明るく声をかけた。

立哨活動のほかにも、啓発品デザインや自転車のヘルメット着用普及、遺族の立場としての講演にも意欲をのぞかせる。その根底には「一人でも多くの方が、心の隅に交通安全の意識を持つだけで事故は減らせるはず」という強い思いがある。

「少しでも事故が起きにくい環境に変えたい」。幼くしてこの世を去った妹のためにも、同運動期間中はできる限り街頭に立ち、子どもたちの登校を見守り続けるつもりだ。

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