希少甲殻類キタホウネンエビ、他の生物分布関与 カワセミ水族館

会津地域の沼で採集したキタホウネンエビ(アクアマリンいなわしろカワセミ水族館提供)

 アクアマリンいなわしろカワセミ水族館(猪苗代町)の平沢桂副館長らの研究グループは、国内に生息する希少な甲殻類「キタホウネンエビ」の種の分布に哺乳類や鳥類が関わっているなどとする研究成果を発表した。希少種の分布や進化の過程に関する研究として、論文が米国科学誌に掲載された。

 キタホウネンエビは、雪解け時期の沼などで見られる淡水性の甲殻類で、成体は20ミリ前後。オレンジの体色が特徴で、春先の雪解け時にふ化し、短期間で成長、産卵する。卵は一度乾燥して長期間休眠する特徴があり、翌年の雪解けに備える。日本の固有種として長年にわたり北海道と青森県でしか報告されなかったが、2015年に平沢さんが会津地域の沼で発見し、県内で初めて生息を確認。山形県と秋田県にまたがる鳥海山麓でも見つかっている。

 研究グループは平沢さんや茨城大、山形大の研究者らで構成。それぞれの生息地からサンプルを収集して遺伝子解析を行うと、会津と鳥海山麓の集団間で同じ遺伝子の種が移動した痕跡があり、さらに津軽海峡を挟む北海道と青森の集団間にも同様の動きが観察できた。キタホウネンエビは自力で分布を広げることができず、卵の段階で他の生物により運ばれると考えられている。広範囲に分散していることから、分布には哺乳動物だけではなく鳥類が関与した可能性を示した。

 平沢さんは「県内の生息地は今のところ1カ所だけだが、今後も会津地域を中心に調査を継続して新しい生息地を見つけていきたい」と話している。

 展示は2週間程度

 発表を記念して会津地域で採集したキタホウネンエビの展示が8日、同館で始まった。成体から1カ月程度で命を終えることから、展示期間は2週間程度になる見込み。

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