常連客、ラーメン店主に 中山の「天将」、「県後継者人材バンク」初成立

梅津清さん(右)からラーメン店を引き継いだ佐藤宏一さん。「変わらぬ味を目指す」と話す=中山町

 中山町長崎で長年愛されてきたラーメン店「らーめん天将」を、常連客だった佐藤宏一さん(44)=寒河江市島=が会社員から転身し事業承継した。「地域に愛されてきた味をなくしたくない」との思いで「二代目天将」の店名で今月オープンした。県事業承継・引継ぎ支援センターの「県後継者人材バンク」制度による初の成立事例となった。

 同店は、元店主の梅津清さん(69)が約20年にわたり営業してきた。自家製麺を使った味噌(みそ)つけ麺や地獄味噌らーめんなどが人気を集めていたが、2020年に心筋梗塞を患い無理ができなくなった。新型コロナウイルスが重なり、年齢なども考慮し、第三者への事業承継を考え始めた。中山町商工会に相談、同センターとも連携しながら後継者を探したがうまくまとまらず、体力の限界から22年12月で店は休業した。

 佐藤さんは店オープン当初から通う常連。23年になって訪れると、店が閉まっていた。インターネットなどで調べ、後継者を探していることを知った。「この味が食べられなくなるなんて」。悩みに悩み周囲から反対も受けたが、「やらないと後悔しそう」と人材バンクに登録した。

 同センターは国の委託を受けて県企業振興公社が運営を始めた相談窓口で、今月からはやまがた産業支援機構が担う。21年に始まった同バンク制度は創業希望者や事業を引き継ぎたい人が登録し、同センターが後継者不在の企業や個人事業主と引き合わせる。2人は面談を経て先月、事業譲渡契約を締結した。同センターによると、引き継ぐ業種や時期、事業所の地域などの条件が全て合致するのは難しいという。

 梅津さんは度々訪れた佐藤さんのことを覚えており「店の味を知っているので安心して任せられる」と期待を込める。今年に入ってから作り方の指導を行い、メニューはそのまま引き継ぐ。今月1日のオープンから多くの客が訪れた。佐藤さんは「先代と変わらぬ味を提供していきたい」と話す。

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