壇蜜さん「つれぇ」所属事務所が突然“破産”で悲嘆 “未払いギャラ”は諦めるしかない?

所属事務所が破産というトラブルに巻き込まれた壇蜜さん(写真:ロケットパンチ)

タレントの壇蜜さんや、吉木りささんらが所属し「グラビア界の名門」ともうたわれた芸能事務所「フィット」が破産手続きを開始したことが先月22日に分かった。

所属タレントの杉原杏璃さんはX上でファンに応対する形で「かなり前からギャラ未払いのまま突然(事務所)なくなったよー」とコメント。

壇蜜さんはレギュラーラジオ番組の中で「事務所がねー、吹っ飛んだー。つれえ(つらい)」と複雑な心境を吐露した。その後、週刊誌が直撃した際には「(未払いギャラのことは)今まさに弁護士さんと話をしている最中なので、詳しいことはちょっと」と言葉を濁したようだ。

「フィット」に所属していたタレントらは、支払われていない可能性のあるギャラを回収することができるのだろうか。

所属タレントは未払いギャラ回収できるのか…

債務整理に注力する菅谷良平弁護士によれば、「配当すべき財産が(フィットに)あれば配当として未払いのギャラが支払われることになります」として説明を続ける。

「破産管財人はこれから出演料・広告費・ロイヤリティーなどの未払いの売掛金があれば回収したり、事務所の退去にあたって敷金の返還請求をしたり、機材や備品があれば売却するなどして財産を管理処分していきます」

破産管財人によって管理される“破産した会社の財産”は「破産財団」と呼ばれ、これらが未払いのギャラなどへの弁済に充てられるという。

「配当すべき財産は、債権者である元所属タレントらにも可能な限り配当されることになりますが、残念ながら微々たる金額である可能性が高いと思います」(菅谷弁護士)

“契約”によっては「微々たる金額」も受け取れない可能性

しかし、この「微々たる金額」すら受け取ることのできないタレントもいるかもしれない。

芸能事務所とタレントの間で結ばれている“雇用形態”によって未払いギャラを支払う“優先度”が異なるためだ。

芸能事務所とタレント間では、一般的に「雇用契約」「請負契約・業務委託契約」「マネジメント契約」などの契約が結ばれることが主流といわれている。

菅谷弁護士によれば、このうち「雇用契約」であれば、優先的に支払いを受けることができるという。

「破産法では、雇用契約をしている従業員への未払い賃金(賃金債権)について、破産手続き開始前3か月の賃金請求権は『財団債権』となり、それ以前の賃金請求権は『優先的破産債権』となります(破産法149条1項、98条1項、民法306条2号)。

『財団債権』とは、破産配当に先立って破産財団から“優先的”に随時弁済を受けることができる債権のことで、『優先的破産債権』とは、他の一般の破産債権に優先して破産配当を受けることができる債権のことです。

ちなみに、破産手続き開始前3か月間の賃金請求権が特に優先されるのは、破産手続き開始直前の労務の提供が、破産財団の形成・維持に寄与していることを重視しているためです」

一方、「雇用契約」以外の場合は「法的保護がないので、一般的破産債権として扱われ、優先的に支払われることはありません」(菅谷弁護士)。

今回、「フィット」が各所属タレントらとどのような契約をしていたかはわかっていないが、もし「請負契約・業務委託契約」「マネジメント契約」などを結んでいた場合、タレントらは未払いのギャラを回収することが難しい可能性もあるようだ。

「フィット」が入居していたビル(東京都渋谷区/弁護士JP編集部)

「倒産」は前もって告知しなくても違法ではない?

「フィット」の破産手続きがかなり「突然」だったことは、杉原杏璃さんのX投稿からもわかる。しかし、一般的な会社において、雇用契約をしている従業員に対してでも、ある程度事前に破産手続きをする旨報告する義務はないのだろうか。

この疑問に対し菅谷弁護士は、「報告する法的義務はありません」ときっぱりと言い切る。

「法人の破産手続きでは、弁護士に正式に依頼する直前まで通常通りに営業し、相談から依頼までの間に打ち合わせを繰り返して(破産)申し立ての準備を行い、依頼と同時に事業停止、従業員を解雇、また、債権者に通知を発しつつ、債権届の到着を待たずに破産申し立て、という方法をとる場合があります。これを『密行型』と呼んだりしますが、このような方法をとることができる以上、倫理的な問題はともかくとして、雇用契約などの相手方に対して事前に報告する義務はありません」

所属タレントらにとっては厳しい春となったが、壇蜜さんはレギュラーラジオ番組の中で、当面はマネージャーと2人で仕事を続けていくと発言。吉木りささんは自身のブログ上で、芸能プロダクション「株式会社リップ」へ移籍することを明らかにした。杉原杏璃さんもまた「さぁ 仕事もプライベートも楽しんでいきましょー(キラキラの絵文字)」とXに投稿。

すでに再スタートに向け力強い一歩を踏み出しているようだ。それぞれが一番輝ける場所で、新たな活躍を見せてほしい。

© 弁護士JP株式会社